原子力発電所から生じる高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定を巡り、国から文献調査の申し入れを受けた茨城県常陸大宮市で9日、議員協議会が非公開で開かれた。申し入れを受けた先月31日以降、市から住民向けの説明はなく、議会も市民が見られない場で検討を続けていることに、市民らからは「不透明だ」と不満の声が上がっている。
市長「最終的には政治判断」、議員協議会は非公開
市議によると、9日の議員協議会に出席した鈴木定幸市長は「議論を重ねても結論が出るわけではない。最終的には政治判断をする」と強調していたという。
約1時間半にわたって非公開で開かれた協議会には全市議16人が出席し、鈴木市長ら市側も同席。16日までに議員が市民からの意見を聞き、同日に協議会を再び開いて意見を出し合うことが決まった。秋山信夫議長は協議会後、「市民の代表として、市民に丁寧に説明したい」と話した。
住民説明の場は設けられず、議会も非公開で検討
文献調査は、調査主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)の規定で「地元の市町村長が国からの申し入れを受諾すれば実施できる」と定められており、議会や住民の同意は必要ない。国が申し入れた先月31日、鈴木市長は記者会見で「受け入れについての住民説明会は考えていない」と話し、議員からの意見を聞いて対応を判断する姿勢を示していた。現時点で、市民への説明の場は設けられていない。
議会も市民から見えない場所で検討を進める。4日に国やNUMOの担当者を招いて開かれた議員協議会も非公開で行われ、16日の協議会も非公開だ。市ではこれまでも、議員協議会は全て非公開で行っており、議事録も作成していない。市議会事務局によると、議員協議会を非公開で行うことを定めた条例などはなく、「慣例として非公開にしている」という。
市民から不満の声、識者は説明責任を指摘
ある市議は「市民から見えないところで議員だけで話を進めている印象を持たれてしまうのは、賛成派、反対派の双方にとってよくないのでは」と懸念する。
「密室」で議論が進む現状について、市民からも不満の声が上がる。同市の男性(71)は8日に、9日の議員協議会を公開することや、議事録作成などを求める要請を議長宛てに行った。男性は「議論がどのように進んでいるのか市民は分からない。扉を閉ざさずにオープンに議論してほしい」と語った。9日に市役所を訪れた同市の主婦(63)も「文献調査を受け入れただけでも風評被害がないのか心配だ。市民の意思を伝える場がないのはおかしい」と憤る。
法政大の土山希美枝教授(地方自治)は「市長と議会の議論は市の未来を左右するからこそ、見える場で行われるべきだ。議会がどの立場で、なぜ非公開で協議しているのか、少なくとも事後には何を議論したのか、市長と議会は市民に説明する責任がある」と指摘する。
賛否伯仲、市長は18日までの定例会会期中に結論へ
9日の議員協議会では、鈴木定幸市長が国から申し入れを受けた経緯を説明した後、市議全員が意見を述べた。出席した市議によると、賛成や反対を示した議員がいたほか、賛否を保留する議員もいた。賛成と反対の議員数は伯仲した。賛成議員からは「文献調査を進めながら議論すればよい」「全国で議論が巻き起こるのでは」などの声があがった。一方、反対議員からは「市民への説明なしで始まるのはおかしい」「風評被害の恐れがある」などの意見が出たという。
また「安全性についてもっと勉強したい」「市民や議会で分断が生まれるのではないか」という意見もあった。
鈴木市長は昨年6月以降、市を訪れた経済産業省とNUMOの担当者から、調査に関する説明を受けていたことを明らかにしたという。昨年10~12月、常陸大宮市民を対象とした勉強会が東京と水戸市で複数回開かれていたことも明かされた。
協議会は、16日に再度開くことが決まった。鈴木市長は、市議会の意見を聞いたうえで、早ければ18日までの定例会会期中に結論を出す意向を示している。



