殺人前科のある元暴力団員のマサミチは、罪にまみれた人生を歩んできた。福岡の田舎町に生まれ、小学生の時に父が炭鉱の落盤事故で亡くなった。母は程なく再婚し、弟が生まれた。
非行の果てに暴力団へ
新しい父に反発し、「こんなやつと勝手に結婚しやがって」と家に寄りつかなくなった。恐喝、暴走、シンナー、覚醒剤と悪行の限りを尽くし、家族とは縁を切り、暴力団に入った。
極道の世界は肌に合っていた。危ないしのぎで得た金で夜な夜な豪遊し、邪険に扱った妻は幼い子を連れて出て行った。
武力抗争での殺人と服役
ある時、大規模な武力抗争が起こる。当時の役目は「行動隊長」だった。覚悟を決め、敵対する組の施設にトラックで突っ込み、驚いて出てきた男の胸を拳銃で撃ち抜いた。即死だった。
懲役8年。後悔はなかったが、長い刑務所暮らしで体力と気力は衰え、極道への執着がぷつりと切れた。「足を洗わせてください」と組を飛び出し、拳銃は海に沈めた。
牧師との出会いと更生への一歩
長居公園の近くに部屋を借り、日がな一日、酒を飲んで過ごした。時間は無限にあるが、連絡が取れる家族も友人もいない。金も尽きてきた。
「もうそろそろ死に時かな」と行く当てもなく西成をうろうろしていると、公園から叫び声が聞こえた。「あんたら、酒やパチンコしかないんか。夢とか目標は忘れたんか。生きてる意味はなんや? 人生やり直さんかい!」
炊き出しに集まった男たちに小柄なおばちゃんがどなり散らしているのを聞いているうち、なぜか涙が止まらなくなった。思わず駆け寄り、手を握って懇願していた。「姉さんに命、預けさせてくれ」
2014年秋、当時60歳だったマサミチは、四つ年上の牧師・西田好子と出会い、メダデ教会(大阪市西成区)の信徒になった。ただ、マサミチはそう簡単に罪を悔い改めるようなタマではなかった。



