匿名・流動型犯罪グループ(匿流)による事件を防ぐため、匿流の上位者のスマートフォンなどから情報を遠隔で入手する手法について、学識者らの検討会が議論を始めた。警察庁が委嘱したもので、実現への道筋を早期に示すことが期待される。
栃木県の強盗殺人事件の教訓
栃木県上三川町で5月に起きた強盗殺人事件では、主導役が現場指示役に標的の住所や写真、資産情報を送っていた。現場では不審者や車の目撃が相次いでいたが、警察は事件を防げなかった。
匿流は秘匿性の高い通信アプリを使い、内容は暗号化され、第三者は見ることができない。メッセージの自動消去機能もあり、押収しても復元できないケースが多い。現行の通信傍受では限界がある。
遠隔傍受の仕組みと課題
警察庁が想定するのは、匿流幹部のスマホを遠隔で監視し、暗号化される前の通信内容を読んで犯行計画を把握し、対策をとると同時に摘発につなげる手法だ。警察が何らかの方法でスマホにマルウエアを仕込み、ハッキングすることになる。
スマホ遠隔傍受は、通信の監視、保存データの監視、GPSやマイクなどの遠隔操作が可能で、対象者の行動や交友関係を正確に把握できる。ただし、憲法が保障する「通信の秘密」に関わる可能性もあり、幅広い議論が必要だ。
欧米の事例と今後の展望
欧米ではテロ防止などを目的に、捜査機関によるスマホ遠隔傍受が一般化している。この制度があれば、栃木事件で被害を防げた可能性もあった。犯罪組織がスマホに逃げ込んでいる以上、警察に権限と武器を与えるのは当然だ。
一方で、強大な捜査手法であるため、警察が適正な手続きで運用することが必須である。



