地震への備えというと、非常食や水、防災リュックなど「なにを買えばいい?」と考える方が多いのではないでしょうか。もちろん備蓄も大切です。でも、整理収納アドバイザーとして多くのお宅を見てきた防災士の視点から、まず見直してほしいのは「今の家の中」です。地震が起きたとき、家の中にあるモノが落ちたり、倒れたり、避難経路を塞いだりする可能性があります。防災グッズを増やす前に、まずは家そのものを安全な場所にする。今回は片づけの視点からできる「地震に強い家」の5つのルールをご紹介します。
1. 生活空間のモノを減らす
まずチェックしたいのは、普段過ごしている場所にどのくらいモノが出ているかです。特に気をつけたいのが家具の転倒や、落下すると危険なモノ。「倒れてきそうな家具はない?」「棚から飛び出してきそうなモノは?」「落ちたら割れそうなモノは?」といった視点で、リビングやダイニングを見渡してみてください。
片づけというと、見た目をきれいにするためのものと思われがちですが、防災の面でも重要です。例えば、飾っているモノを厳選する、背の高い家具を減らす、割れ物を置く場所を見直す。モノが少なければ、地震が起きたときに落下したり散乱したりするモノも減らせます。「これが地震で動いたらどうなる?」という目線で、家の中を一度チェックしてみましょう。
2. 玄関や廊下などの「避難経路」を塞がない
次に確認したいのが避難経路です。玄関や廊下、ドアの周辺にモノを置いていませんか? 普段なら少し邪魔なだけのモノでも、地震発生時には避難の妨げになる可能性があります。特に注意したいのが、ドアの近くにある家具や大きなモノ。地震の揺れで倒れたり移動したりしてドアが開けられなくなると、避難に影響することがあります。
玄関まで実際に歩きながら、「ここに家具が倒れたら通れる?」「このモノが散乱しても玄関まで行ける?」と確認してみてください。「床にモノを置かない」は、片づけや掃除をラクにするだけではなく、防災にもつながります。
3. 寝る場所の周りは特に安全にする
家の中でも、特に安全性を高めてほしいのが寝室です。寝ている間は、地震が起きてもすぐに状況を判断したり、モノを避けたりすることが難しい、非常に無防備な状態だからです。ベッドや布団の周りに、倒れてくる家具はありませんか? 頭の上に額縁や重いモノを飾っていませんか? 棚の上から飛んできそうな小物はありませんか?
昼間なら危険を感じて避けられるモノでも、眠っているときにはそうはいきません。寝ている場所を中心に、「ここにあるモノが全部動いたら?」と想像してみると、危険な場所が見つけやすくなります。寝室はおしゃれさや収納力よりも、まず安全を優先したい場所です。
4. 収納は「重いモノを下、軽いモノを上」に
収納の中にも防災のルールがあります。基本は、重いモノを下に、軽いモノを上に収納すること。重心を下に持ってくるだけでも家具が転倒しにくくなり、減災対策になります。そして意外とやってしまいがちなのが、家具や冷蔵庫の上への「ちょい置き」。大きい鍋やカセットコンロなどを高い場所に収納していると、地震の際に落下してケガにつながるおそれがあります。
普段は落ちてこないので危険を感じにくいのですが、大きな揺れが起きれば話は別です。「置けるスペースがあるから」と収納場所にするのではなく、「地震が起きても安全か?」まで考えて定位置を決めましょう。家具や大型家電については、転倒や移動を防ぐための対策をできる範囲で行っておくことが大切です。「家具転倒防止」で検索すると突っ張り棒タイプや耐震ジェルマット、転倒防止用のかませ板など様々な商品があります。家具の大きさや設置場所に合わせて対策を検討してみてください。
5. 防災備蓄を「持っているだけ」にしない
最後は防災備蓄です。水や非常食、防災用品を購入して安心してしまっていませんか? 実際に必要になったとき、「非常食の賞味期限が切れていた」「ウェットティッシュが乾いていた」「どこにしまったかわからない」では、せっかくの備えを十分に活用できません。まず家族全員が「防災用品がどこにあるのか」を知っておくこと。そして定期的に中身や期限を確認しましょう。
年に2回、東日本大震災があった3月と防災の日がある9月を目安に防災用品を見直すことをおすすめしています。また、特別な非常食ばかりを大量に保管するのではなく、普段から食べている食品を少し多めに持ち、食べた分だけ買い足していく「ローリングストック」も取り入れやすい方法です。普段から食べ慣れているモノなら無駄になりにくく、災害時にもいつもの味を食べられる安心感があります。おやつなども少し多めにストックしておくことで非常時にも「ホッ」とする時間を作ることができるかもしれません。
防災というと「なにを買うか」に目が向きがちですが、モノを増やすことだけが備えではありません。むしろ最初にやってほしいのは、「危険なモノを減らす」「安全な場所に移動する」「避難できる空間をつくる」という家の片づけです。防災グッズを買いに行く前に、まずは部屋の中を一周してみてください。落ちてくるモノはないか。倒れてくるモノはないか。逃げるときに邪魔になるモノはないか。片づけは、暮らしを快適にするだけではなく、自分や家族を守るための防災にもなります。「備えるためにモノを増やす」前に、「今あるモノで危険をつくらない」。それが、今日から始められる一番身近な防災の第一歩です。