高知県黒潮町の夫婦が、地元の海を利用するレジャー客の安全を守るため、ライフセービングクラブを発足させ、海水浴場などで活動を続けている。大島貞さん(52)と照子さん(45)の夫妻は、ライフジャケットの正しい着用方法や海辺で発生する強い潮の流れなどについて客に助言している。「海は楽しいと感じてもらえるとうれしい」と話す。
兵庫・西宮から移住、サーフィン好きの夫婦
大島さん夫妻は、道の駅「ビオスおおがた」に近い浮津海水浴場で監視員の当番が回ってきた日曜日の朝、浜辺にテントを張り、海水浴の範囲を示すフラッグを立てた。浮力のあるレスキューチューブやレスキューボードを用意し、海水浴客がけがをしないよう砂浜に落ちたガラスや金属片を拾った。
貞さんは長野県出身で、照子さんは新潟県出身。2人ともサーフィンが大好きで、2014年に貞さんが会社を退職し、兵庫県西宮市から家族で黒潮町に移り住んだ。これまでの経験を生かし、自営で電気制御盤などの設計を請け負いながら質素な生活を送る。人工物が少なく、自然の砂浜が残る環境に「オーストラリアの田舎のようなゆるい雰囲気が心地よくて」と語る。
クラブ発足、資格を取得し活動
自宅近くのビーチで自分の子どもや知人らと波乗りを楽しむうちに、サーフィンが盛んなオーストラリアや湘南エリア(神奈川県)では当たり前のようにライフセーバーが活動していることを思い出した。黒潮町の海も安全性を高めたいと、日本ライフセービング協会(東京)が認定する水辺の安全知識を身につける「ウォーターセーフティ」やライフセーバーの資格を取得し、クラブを発足。「黒潮うきぶちサーフライフセービングクラブ」と名付けた。今後、メンバーを増やし、県組織への発展を目指すという。
事故を未然に防ぐための取り組み
今夏、ライフセーバーとして浮津海水浴場の適切な監視方法を町に提案。常駐する監視員2人は必ず別々の場所から海の様子を見ることや、クラゲに刺された場合は真水で洗うと毒素が体内に入る危険性があるため必ず海水で洗うことなど、監視する側で情報共有するように努めた。ライフジャケットを無料で貸し出すことも検討する。
貞さんはかつてサーフィン中や川にいた時に何度か溺れかけた人を助けたといい、遊泳時はライフジャケットの着用を勧める。「水に浮くことを実感すると楽しいと思える」。ただ体にフィットしたジャケットを身に着けないと、脱げたり頭が水中に沈んだりして危険と指摘する。
照子さんは言う。「助けるよりも、事故を未然に防ぐことが一番大事。監視されていることを気にする人もいる。ガードを緩くしながら、いざとなったら助けに行く。そういうライフセーバーでありたい」
全国のライフセーバーは約5000人
日本ライフセービング協会によると、ライフセーバーの資格があり活動する人は全国で約5000人。同協会認定の海水浴場は四国で計6か所あり、県内はヤ・シィパーク(香南市)のみ。四国は他の地区に比べてライフセーバーが少なく、同協会も講習会の開催や大学での啓発活動に力を入れるという。
一方、高知市の小学4年男児がプールの水泳授業中に溺れて死亡した事故などを受け、ライフジャケットを着用して授業を行う学校が増える。同協会教育本部長の松本貴行副理事長は「水泳はタイムを競うことよりも水に慣れることが重視されるようになった。ライフジャケットを着用すれば泳げる人と泳げない人が等しく教育できる」と話す。



