災害対応支える官民一体の「兵站」必要 国防ジャーナリスト・小笠原理恵氏が指摘
災害対応支える官民一体の「兵站」必要 小笠原理恵氏

発生から3日目となった7月30日付の各紙社説(産経は「主張」)は、最大震度7を観測した熊本地震を取り上げた。読売は「人命救助と支援に総力挙げよ」と題した社説で、「政府や自治体は、被災者の救助と現地への支援に全力を挙げる必要がある」と訴え、人命救助や医療支援、熱中症、災害関連死、偽情報への警戒まで幅広く取り上げた。

「停電で冷房使えず熱中症リスク」と指摘

同社説は「停電で冷房が使えないと、熱中症のリスクが高まる」とも指摘し、「災害派遣医療チーム(DMAT)を派遣し、避難所を巡回して災害関連死を防ぐことが急務だ」と求めた。熊本日日新聞は1日、断水や減圧送水による水不足で、自衛隊が医療機関へ給水を続ける様子を配信した。

毎日は4日付の発生1週間の社説「命守る体制整備を万全に」で、近隣での備蓄の重要性に触れた。だが、なお大切な論点が欠けている。それは、軍事用語でいう「兵站(へいたん)」という視点だ。

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医療チーム派遣も物資滞れば維持できず

医療チームを派遣しても、物資が滞れば医療活動は維持できない。冷房機器、発電機、医薬品、水、食料、燃料を誰がどう運ぶのか。道路が寸断された地域へどう届けるのか。こうした支援継続の仕組みが不可欠だ。

災害発生直後の道路では、救急、消防、警察、自衛隊、物資輸送の車両と、通行を確保する道路啓開活動が優先される。支援物資も、要請を受けずに持ち込めば、保管、仕分け、配送のために現地の負担を増やすことになる。現地の要請や調整に基づく初動は、自衛隊、消防、警察などの専門組織が担う。

自衛隊は地震発生翌日には熊本に約300台の移動式クーラーを空輸し、艦艇4隻で飲料水などを輸送。入浴、宿泊などの支援もしている。現地全体の需要を把握して政府や自治体が調整し、自衛隊、警察、消防、医療機関、建設、運送、倉庫、電力、水道、通信などの事業者がそれぞれの能力を生かして必要な人員や物資を届け続ける。この官民一体の仕組みこそ、災害対応を支える兵站である。

「総力を挙げる」は事前の役割分担

自衛隊は自己完結性を備え、発災直後から活動できる重要な組織だが、自衛隊だけで災害対応のすべてを担うことはできない。平時から各組織の役割と責任を明確にし、共同訓練を重ねて災害時には一つの体制として動ける備えで、初動体制をさらに強化してはいかがかと思う。

本当の意味で「総力を挙げる」とは、災害が起きてから人や物資を集めることではない。誰が何を担い、どの指揮系統で動くのかをあらかじめ決めておくことだ。新聞にも社説などで、掛け声にとどまらず、より迅速な対応につながる制度や、役割分担の提案にまで踏み込んでほしい。

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