呼吸器内科医の大谷義夫氏(池袋大谷クリニック院長)は、自身の経験と科学的根拠に基づき、ウォーキングが心身に与える好影響を詳述している。鬱屈した気分が散歩後に軽くなった経験は多くの人にあるが、その背景には生理学的なメカニズムが存在するという。
ウォーキングがもたらす多面的な健康効果
大谷医師は、かつて週数回の水泳や暗闇ボクシングを楽しんでいたが、2020年のコロナ禍で診療時間が1日12時間に増加し、運動習慣を維持できなくなった。そこでランニングを試みたが、50代後半の体力では苦しく継続できず、ウォーキングに切り替えた。この選択が結果的に大きな効果を生んだ。
「始めてみると実に快適で、驚くべき効果がありました」と大谷医師は振り返る。数カ月後には体重が減少し、血圧やコレステロール値などのメタボ関連数値も改善。さらに夜間の睡眠の質が向上し、良いことずくめだったという。
1日1万歩の科学的根拠
大谷医師は1日1万歩を推奨しており、これは自身の日常的な歩数でもある。この数値は多くの研究で健康指標との関連が示されており、特に心血管疾患リスクの低下やメンタルヘルスの改善に寄与することが知られている。論文のレビューからも「歩くことは心によい効果をもたらす」というファクトが確認されているという。
大谷医師は「何を着ても履いてもいい、ハードルは低く設定を」とアドバイスし、気軽に始められる点を強調する。ウォーキングは特別な装備や場所を必要とせず、日常生活に取り入れやすい運動である。
自己効力感の向上と心理的効果
研究によれば、4週間のウォーキング継続で自己効力感が高まることが示されている。これは「自分はできる」という自信につながり、ストレス軽減や気分の安定に寄与する。大谷医師は、歩くことで脳内の神経伝達物質が変化し、セロトニンやエンドルフィンの分泌が促進されることが心理的効果の一因だと説明する。
「鬱屈としていたのに、散歩したら突然『まあいいか』と思えた」という体験は、多くの人が共感するだろう。この現象は、歩行がもたらすリラックス効果と気分転換によるものだ。
医師のプロフィールと実践
大谷義夫氏は1963年東京都生まれ。1989年群馬大学医学部卒業後、九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、米国ミシガン大学留学などを経て、2009年に池袋大谷クリニックを開院。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医の資格を持ち、呼吸器内科のスペシャリストとしてテレビなどでも情報発信を行っている。著書に『1日1万歩を続けなさい 医者が教える医学的に正しいウォーキング』(プレジデント社)などがある。
大谷医師は現在もウォーキングを趣味としており、その健康効果を実感し続けている。彼の経験と科学的知見に基づくアドバイスは、運動習慣のない人にも取り組みやすいものだ。



