俳優で作家の岸惠子さんが8月7日、横浜市の自宅で亡くなりました。享年93歳。所属事務所の発表によれば、死因は「老衰」であり、近親者に見守られての最期だったそうです。6月には、美輪明宏さんが91歳で、7月には、初代・峰不二子役を務めた声優の二階堂有希子さんが、87歳で亡くなりましたが、いずれも老衰とのことです。
こうした訃報に接して、「大往生」という言葉を思い浮かべた人は多いのではないでしょうか。しかしながら、老衰とは医学的にいったい何を指すのか、しっかり理解されている方は多くないかもしれません。
厚生労働省が定める「老衰」とは
がんや心不全のような明確な病名ではないこの死因は、いま日本人死亡者の8人に1人を占めるまでになっています。最新の老化研究の知見をもとに、老衰という現象への理解を深めましょう。
まず押さえておきたいのは、老衰が「積極的に診断される病名ではない」という点です。
厚生労働省の「死亡診断書記入マニュアル」では、老衰を「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死」の場合に用いるものと定めています。つまり老衰とは、あらゆる疾患が「否定」されたときにつく死因、ということになります。
老衰が増えた「もう1つの側面」
がんや心臓病、認知症などを患っていた人でも、老衰でお亡くなりになりますし、老衰死と診断するにあたって、あらゆる検査を行って病気がないか調べるものでもありません。
老衰が増えた背景には、医療の進歩や高齢化の進行があるとみられます。細胞老化・慢性炎症と老衰の関係についても、最新の老化研究で注目されています。
老衰ははたして穏やかな死か?
老衰が穏やかな死であるかどうかについては、医学的にも議論があります。最期の苦しみの有無は個人差が大きく、一概に言えるものではありません。
必ず訪れる最期をどう過ごすかについても、本人や家族の考え方によって選択肢は異なります。老衰という死因を正しく理解し、自分自身や身近な人の最期について考えるきっかけにすることが大切です。



