突然、片方の手足が動かなくなる、言葉がうまく出ない、顔の片側がゆがむ――こうした症状が現れたとき、まず疑うべきは脳卒中だ。脳卒中は治療開始までの時間がその後の回復を左右するため、早期診断が極めて重要となる。
脳卒中に似た別の病気「ストローク・ミミック」
一方、救急医療の現場では、脳卒中によく似た症状を示す別の病気も少なくない。これらは「ストローク・ミミック(stroke mimic)」と呼ばれ、ミミックとは「まねをするもの」という意味だ。例えば、てんかん発作の後に一時的に手足が動かなくなるトッド麻痺、低血糖、片頭痛などでは、脳卒中とそっくりな症状が突然現れることがある。診察に加えてCTやMRI検査で絞り込み、診断精度を上げる。
脳卒中なのに別の病気に見える「ストローク・カメレオン」
もう一つ注意が必要なのが「ストローク・カメレオン(stroke chameleon)」だ。こちらはミミックとは反対に、「本当は脳卒中なのに、別の病気に見えてしまう」ケースを指す。脳卒中というと、典型的な片麻痺やろれつの回りにくさを想像するし、実際に多い症状だ。しかし、突然のめまいやふらつき、吐き気、物が二重に見える、片手だけがうまく動かない、ぼんやりして普段と様子が違うなど、こうした症状だけで発症することもある。「疲れているだけ」「耳のめまいだろう」「年齢のせい」と思っているうちに、治療のチャンスを逃してしまう可能性がある。
つまり、脳卒中診療には二つの難しさがある。「脳卒中のように見えて脳卒中ではない」ミミックと、「脳卒中らしく見えない脳卒中」であるカメレオンだ。家庭でこの二つを完璧に見分けようとしないことが重要で、特に、これまでなかった神経症状が「突然」現れた場合には注意が必要だ。顔のゆがみ、手足の脱力、言葉の異常はもちろん、突然の激しいふらつきや視覚の異常なども軽視できない。
脳卒中は時間との勝負、迷わず医療機関へ
脳卒中は時間との勝負だ。「脳卒中ではないかもしれない」と迷うことよりも、「脳卒中かもしれない」と考えて速やかに医療につなげること。その判断が、脳とその後の生活を守ることにつながる。もし脳卒中と違ったとしても、それを知ることが大切だと、済生会和歌山病院脳神経外科医長の三木潤一郎氏は述べている。