PSA低値でも前立腺がんが肺転移した珍しい症例 治療方針は?医師が回答
PSA低値でも前立腺がん肺転移の珍しい症例 医師が回答

前立腺がんの治療中に、PSA値が低いまま肺転移が判明した70代男性の相談に対し、がん研有明病院副院長で泌尿器科部長の米瀬淳二医師が回答した。放射線療法が奏功したにもかかわらず転移した稀なケースで、今後の治療方針について専門的な見解が示された。

放射線療法後に肺転移が判明

令和元年の健康診断でPSA値が4.59を記録し、前立腺生検で針10本中3本にがん細胞が見つかり前立腺がんと診断された。グリーソンスコア(GS)は確認されていないが、主治医から手術か放射線療法の選択肢を提示され、6月から38回の放射線療法を受けた。ホルモン療法は行わず経過観察し、PSA値は数年間0.2以下で推移した。

米瀬医師は「放射線療法のみでPSA値が0.2まで下がり、それを維持できたということは、放射線が前立腺にしっかり当たり、十分奏効したといえます。この状況であれば、通常は転移が出るとは考えにくいです」と説明する。

稀な転移経路と診断の重要性

しかし7年5月の健康診断で右肺に13ミリ大の陰影が見つかり、PET-CT検査で肺がんと診断。9月に右肺下葉切除術を受け、術後の病理検査で前立腺がんの肺転移と確定した。術後のPSA値は0.02で、再発予防のためホルモン療法の皮下注射を開始し、今年6月の検査では異常は見られなかった。

「前立腺がんの転移は、まず近くのリンパ節や骨から始まることが多く、肺だけに転移が見つかるのは稀です。またPSA値が上昇せずに転移が出現することも珍しいといえます」と米瀬医師は指摘。その上で「最初の生検で針が当たらない所に悪いがんが潜んでいた可能性や、前立腺がんとは異なる原発性肺がんなど別のがんの可能性もゼロではありません」と述べ、現在の病院から前立腺と肺の病理標本を借りて専門病院でセカンドオピニオンを受け、再度病理診断を検討することを勧めた。

ホルモン療法の継続と画像診断の必要性

現在のホルモン療法については「肺の組織が前立腺がんの転移であれば、しばらく継続をお勧めします」とし、PSA検査だけでは再発を捉えきれないため、定期的なCT検査による画像診断も不可欠と強調。長期間再発がなく副作用が強ければ、休薬を相談する選択肢もあると述べた。

「がん電話相談」は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施。電話は03・5531・0110、03・5531・0133で、カウンセラーが無料で相談を受け付けている。相談内容は医師が検討し、紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがある。