AI(人工知能)開発や統計作成のためなら、本人の同意なしで個人データを外部に提供できる――。そんな改正個人情報保護法が2026年7月に成立した。情報法が専門の石井夏生利・中央大教授は、本人を置き去りにしたルールの危険性を指摘する。
統計特例で機微情報も同意なく提供可能に
今回の法改正で注目を集めたのが、AI開発を含む統計作成が利用目的の場合、企業や医療機関などが本人の同意なしで個人データを第三者に提供したり、インターネット上で公開されているプライバシー性の高い要配慮個人情報を集めたりできるようになる「統計特例」だ。
病歴や健康診断の結果、犯罪被害歴など、差別の原因にもなり得る機微な情報も、本人が知らないうちに大量に取得・提供され、AI開発などに利用できるようになる。
正当な目的と抑止力の限界
SNSなどでは戸惑いや批判の声が広がった。個人情報を守るための法制度なのに、提供時の本人同意を不要にするなら、そこには正当な目的が必要だ。政府は「スタートアップや企業のAI開発を支援するため」と説明したが、それで社会は納得できたのだろうか。
個人情報保護委員会は、統計処理されれば個人が識別できなくなるほか、提供データの目的外利用は禁止されているなどとして「問題はない」との説明を繰り返してきた。提供元や提供先の事業者には利用目的などの公表も求められ、一定の抑止力になる。
悪用リスクと取り締まりの困難
ただ、それだけで本当に十分といえるのだろうか。データ提供を受ける事業者による悪用のリスクは否定できず、取り締まりは困難だという課題が残る。
本人の知らないところで個人データが流通し、AI開発に利用される現状は、個人情報保護の理念から見て重大な問題をはらんでいるといえる。



