東日本大震災の被災者を支えようと、栃木県大田原市から家族で移住した田坂美由紀さん(1977年生まれ)が、震災から15年となった3月11日、陸前高田市の商業施設「アバッセたかた」に姿勢ケア専門店「KCSセンター陸前高田」を開店し、店長を務めている。看護師出身の田坂さんは、民間資格の「姿勢調整師」として、体のゆがみやバランスを整える施術を行っている。
看護師から姿勢調整師へ
田坂さんは中学時代、入院していた祖母に寄り添う看護師の姿に憧れ、看護の道へ。2000年に大田原市の病院で内科医の夫・登司博さん(52)と出会い、結婚し、出産を機に専業主婦となった。
2011年3月、津波で家が流され、過酷な避難生活を強いられている被災者の窮状を新聞やテレビで知り、「自分にできることはないだろうか」と、看護師を志した当時の思いが沸々とわき上がった。震災直後から救援物資や義援金を送る活動に加わった。
ちょうどその頃、夫の登司博さんから「被災地の医療支援に参加したいと思っている」と相談を受けた。幼い長女がいたが、「夫を支えることで被災者の助けになりたい」と、迷いなく家族での移住を決め、2012年春に大船渡市へ移り住んだ。
姿勢ケアとの出会い
復興が進み、生活にも慣れ始めた2015年、長女が健康診断で背骨のゆがみを指摘された。自身の姿勢も直すため、半信半疑ながら親子で通院することになり、そこで姿勢調整師と出会った。力を入れずに優しい手つきで関節を調整すると、長女の背骨のゆがみは解消し、自身の猫背も改善した。医療の世界に身を置いてきた田坂さんは「このような技術があるんだ」と驚き、「自分もやってみたい」と思うようになった。
2020年に姿勢調整師の資格を取得して以降、KCSセンター大船渡で働き始めた。そこには隣接する陸前高田市から通う被災者たちがいた。長い避難生活などで体の姿勢が悪くなり、腰が痛くなるなどの健康不調が続いている現状に胸を痛め、同市でのオープンに向けて準備を進めてきた。
被災者の健康を支える
広さ約50平方メートルほどの施術室では、「ここは痛くないですか」「体のバランスが均一ではなく右に偏っていますね」と優しく声をかけながら、患者の肩や腰、背中に手を当てて矯正を図る。姿勢が直り、スムーズに歩行できるようになった高齢者や、腰や膝の痛みを和らげスポーツで活躍する子どもたち。患者が元気になる姿が原動力となっている。
田坂さんは「健康面で困っている人や被災した人が気軽に相談できる場所にしていきたい」と意気込み、「災害が起きた場合でも、自分の足で避難できるよう一人でも多くの人を元気にしたい」と話す。きめ細かな施術で被災者の心と体を癒やし続けている。



