男性更年期障害の予防に「心拍変動」、ウェアラブル端末でストレス測定
男性更年期予防に心拍変動、ウェアラブルで測定

過度なストレスが発症の原因となる男性更年期障害の予防に役立つ指標として「心拍変動」が注目されている。スマートウォッチなどの普及で日常的に測定が可能となった生体情報で、自律神経の状態を反映しているとされ、ストレスの度合いをデータ化し、治療や個人の体調管理に役立てようと研究が進む。

心拍変動とは何か

心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)は、腕時計型などのウエアラブル端末で日常的に測定できるようになった生体情報だ。人間情報工学の専門家で順天堂大大学院の駒沢真人客員准教授によると、HRVは心臓の鼓動の間隔のゆらぎを測定したものという。

適度にリラックスし、交感神経と副交感神経のバランスが整っているときは、鼓動の間隔にゆらぎがあり、一拍一拍で「ドック、ドックン、ドクー」のような変化がある。この場合、HRV値は高くなる。逆に緊張状態が続く交感神経優位のときは、鼓動の間隔がほぼ一定になる。ゆらぎが少ないためHRV値は低くなる。

「値は個人差が大きいため、継続的に計測し、通常値に比べて低くなっていないかを気にかけるのがポイントだ」と駒沢氏は説明する。

症状変化との相関関係

こうしたHRVの特徴を踏まえ、駒沢氏らの研究チームは、順天堂医院で男性更年期障害の治療を受けている患者らを対象に、ウエアラブル端末とアプリを使い、院外での日常的なHRV変化をモニタリングする研究を進めてきた。その結果、ストレスに左右されるHRV値と男性更年期障害の症状の変化には、一定の相関関係がみられることが分かった。

例えば、ある男性更年期障害の患者を3月から4月にかけて調査したところ、4月が近づくにつれHRVの数値が急落。男性更年期障害の症状の程度を測る質問票(AMSスコア)の数値も悪化した。この患者の場合、新年度に職場環境が変化することに、強いストレスを感じていたという。

一方で、HRVが低くても、男性ホルモン補充療法を受けることでHRV値が改善し、男性更年期の症状も良くなるケースがみられた。

「HRVの推移を観察すれば、患者のストレス度合いを客観的に捉えられ、最適な治療介入やアドバイスを行うことができるようになる」と駒沢氏。「HRVをチェックし、日ごろからストレス発散を心掛けることが、男性更年期の症状を予防する一歩になるのでは」と話している。

治療につなげる課題

これまで企業の中で対策がされてこなかった男性更年期障害が取り上げられるようになったのは重要な一歩だが、症状がある男性をどのように治療につなげるかには課題がある。現在、更年期を迎えている世代の男性は、辛くても我慢して乗り切ることをよしとする価値観のもとで育ってきた人が多い。男性ならではのジェンダー規範に縛られ、相談をためらうケースも見受けられる。

企業の研修やセミナーで男性更年期障害に関する情報発信が積極的に行われることで、体調が悪いときは素直に申し出て、必要に応じて受診することが重要だという理解が広がっていくことに期待したい。