現在、手足口病が27都府県で警報レベルに達し、大流行している。前回の流行から約6年が経過し、免疫を持たない子どもが増加したことが背景にある。立川パークスクリニック院長の久住英二医師が、この病気の特徴と家庭でできるケア、重症化のサインについて解説する。
手足口病の原因ウイルスと型の特徴
手足口病は主にエンテロウイルスやコクサッキーウイルスによって引き起こされる。主な型は以下の通り。
- エンテロウイルス71型:髄膜炎や脳炎など神経系の重い合併症との関連が深い。
- コクサッキーウイルスA16型:最も一般的で、典型的な経過をたどることが多い。
- コクサッキーウイルスA6型:近年目立つ型。発疹が全身に広がりやすく、回復後に爪が剥がれる特徴的な症状を伴うことがある。
- コクサッキーウイルスA10型:A6型と同様、ときに激しい症状を引き起こす。
これらの型同士には交差免疫がほとんどなく、一度かかっても別の型に再感染する可能性が高い。今年の流行は、前回から6年が経過し、未感染の子どもが増えたことが原因と考えられる。
増えている「非典型ケース」
手足口病の典型的な経過は、発熱に続いて口の中に水疱ができ、手のひらや足の裏に小さな水疱が現れる。しかし近年の流行では、以下のような非典型的な症状が目立つ。
- 発疹が全身に広がる:手足だけでなく、お尻や肘、膝、顔や体幹にまで大きな水ぶくれが広がり、破れてかさぶたになる。
- 見た目と痛みが一致しない:皮膚の発疹は見た目の割に痛みやかゆみが少ない一方、口の中の潰瘍(口内炎)は焼けるように強く痛む。これが子どもが水分を拒否する最大の原因になる。
多くの場合は軽症だが、まれに重症化することがある。以下の症状が1つでも見られたら、夜間でもためらわず救急外来を受診すべきだ。
重症化のサイン
- 39℃以上の高熱が3日以上続く
- ぐったりして視線が合わない、何度も嘔吐する、寝入りばなや刺激に対して体がビクッとする動きが繰り返し起こる
- 肩で息をしている、呼吸が荒く苦しそう、顔色が悪い
- 激しい咳、ピンク色の泡のような痰
- 半日以上おしっこが出ない、泣いても涙が出ない、口の中がカラカラに乾いている
感染が広がりやすい理由
手足口病は飛沫感染や接触感染で広がる。特に保育園や幼稚園などの集団生活では、子どもの間で急速に拡大する。また、症状が治まった後も便中にウイルスが排出されるため、トイレ後の手洗いが不十分だと家庭内感染が続くことがある。
家庭でできる正しいケア
口内炎による痛みで水分が取れないと脱水になりやすい。以下の対策が有効だ。
- 水分補給:冷たいものや刺激の少ない飲料(麦茶、イオン飲料など)を少量ずつ頻回に与える。ストローを使うと痛みが軽減される。
- 食事:熱いものや酸味の強いものは避け、ゼリーやプリン、冷ましたお粥など喉ごしの良いものを。
- 痛み止め:アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬を医師の指示に従って使用する。ただし、アスピリンはライ症候群のリスクがあるため避ける。
- 皮膚のケア:水疱は清潔に保ち、かきむしらないように爪を短く切る。必要に応じてワセリンなどで保護する。
久住医師は「手足口病はほとんどの場合自然に治るが、痛みから水分を拒否する子どもへのケアが重要。特に口内炎の痛みを軽減してあげることで、脱水を防げる」と指摘する。また、「ワクチンはなく、予防には手洗いと消毒が最も有効。保育施設ではタオルの共用を避け、おもちゃの消毒を徹底してほしい」と述べている。



