筋肉や腱など本来は骨でない組織に骨ができ、体の動きが次第に奪われる指定難病、進行性骨化性線維異形成症(FOP)。患者の山本育海さん(28)は、小学校3年生だった2006年に診断され、けがや手術によって病気が進む危険と向き合ってきた。それでも、治療薬を探してほしいと、自ら皮膚の細胞を京都大へ提供した。
そこから作られた人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、培養皿の上で病気を再現し、薬の候補を探す研究に使われた。そして17年、免疫抑制剤として使われるシロリムスが、骨化を抑える治療薬候補として見いだされた。
患者の細胞が研究を動かした
育海さんは母の智子さんとともに、募金や講演、情報発信を続け、研究者を支える側にも回った。患者の細胞が研究を動かし、患者の声が研究を前へ押す。希望を託してから十数年、治療薬を待ち続ける本人と家族の時間、研究者への信頼と焦りを聞いた。
8歳で告げられた難病
病気が分かったときのことを育海さんは振り返る。「小学3年の時、鉄棒から落ちた後に背中が腫れました。病院を転々とし、市民病院の小児科の先生が文献を見つけてFOPではないかと気づいてくれました。当時は、できなくなることが増えて嫌だとは思いましたが、なってしまったものは仕方がない、受け入れるしかないという感じでした」
智子さんは「聞いたことのない病名でした。『手術で治せますか』と尋ねると、『手術ができる病気ではない』と言われました。当時は診られる医師も研究者もほとんどおらず、どうすればいいのか分かりませんでした」と話す。
日常生活での困難
日常生活で大変なことについて、育海さんは「顎が固まり、口がほとんど開きません。柔らかいものを時間をかけて食べています。子供のころは野球や体育を我慢しました。無理をして病気を進める方が嫌だったので、諦めるしかありませんでした」と語る。



