老衰は、がんや心臓病を抑え、日本人の死因の第3位となっています。岸惠子さんや美輪明宏さんも老衰でこの世を去ったと報じられましたが、その最期は苦しいものなのか、それとも穏やかなものなのか。医師がその実態を解説します。
老衰のメカニズムとは
立川パークスクリニック院長の久住英二医師によると、老衰は特定の臓器だけが衰えるのではなく、全身の機能が徐々に低下していく状態です。具体的には、骨格筋量は30歳以降、おおむね年1%前後のペースで減少し、70代以降では加速します。腎臓の糸球体濾過量は中年以降、年におよそ1mL/分/1.73m²ずつ減少。最大酸素摂取量、肺活量、心予備能、骨密度も同様に下降線をたどります。
免疫系では、リンパ球を教育する胸腺が萎縮するため、新たな病原体への免疫反応が鈍ります。さらに超高齢期には食欲そのものが落ちる加齢性食欲不振が現れ、嚥下機能の低下と相まって、摂取エネルギーが減っていきます。
こうした器官や臓器の機能低下は緩やかなので、あまり自覚できませんが、それが顕在化したときに最終的に老衰をもたらすのです。
老衰は「全身が均一に朽ちること」ではない
重要なのは、これらの臓器の老化速度は固定的ではなく、食事・運動・喫煙・職業などの生活因子によって変動するということです。同じ93歳でも、ある人は心臓から、ある人は脳から限界に達します。老衰とは「全身が均一に朽ちること」ではなく、最も速く老いた系統から順に予備能が尽き、やがて全体が引きずられて命を終える状態です。
その時期は人によってさまざまで、いつとはいえません。
老衰は穏やかな死か
では、老衰まではどのような経過をたどるのでしょうか。
少し前まで「ピンピンコロリ」という亡くなり方が注目されていましたが、老衰ではそのようなことはありません。昨日まで元気に活動していた人が急に亡くなるのではなく、徐々に朽ちていくという感じがわかりやすいかと思います。
老衰に至る前には、食事量が落ち、眠っている時間が増え、やがて水分もほとんど摂らなくなります。家族はここで最も動揺しがちです。「食べさせなければ、飲ませなければ弱ってしまう」と思ってしまうのです。もちろんその気持ちはごく自然なものですが、老衰に至るまでの経過の1つという考え方からすると、こうしたときこそ冷静な対応が必要になります。



