女優の岸惠子さんや美輪明宏さんが老衰で亡くなったことが報じられた。老衰は現在、日本人の死因の第3位に位置する。がんや心臓病ではない「老衰」の最期は、果たして苦しいものなのか、それとも穏やかなものなのか。立川パークスクリニック院長の久住英二氏が解説する。
老衰の最期は苦しいのか
終末期に食べられなくなったり飲めなくなったりするのは病気ではなく、体が代謝を終息させていく生理的過程であり、この時期の脱水や栄養失調はむしろ苦痛を減らす方向に働く可能性があるという。
逆に、よかれと思って点滴などで水分や栄養を与えてしまうと、むくみや腹水、痰などの増加を招き、苦痛を強めてしまうことにもなりかねないと指摘する。
老衰の特徴と人生会議の重要性
老衰の最大の特徴は、予測が難しいことだ。がんの終末期のように最期の数週間のレベルで急に具合が悪くなるものではなく、何年もかけて生命力がじわじわと低下していき、ある日、最後を迎える。予測が不可能だからこそ、元気なうちに残された人のために意思表示――アドバンス・ケア・プランニング(人生会議)をしておくことが大事だとしている。
久住氏は診療の際、高齢の患者さん(生活習慣病などで受診されている方)やご家族に、「元気なうちに家族で話し合ってくださいね」などと伝えるが、「いやいや、まだそんな」と流されてしまうことが多く、残念に感じるときがあるという。
岸惠子さんと美輪明宏さんの最期
岸惠子さんは自宅で、近親者に見守られて亡くなった。女優として、ジャーナリストとして、作家として、自分の生き方を自ら選んできた彼女だからこそ、最期のかたちまで自ら選び取られたのではないかと久住氏は語る。
美輪明宏さんは亡くなる3カ月ほど前から体調が思わしくなく、自宅で静養していた。亡くなる前には「ありがとう」と、感謝の言葉を一言述べてから息を引き取られたという。
老衰による死は、感染症やがん、脳卒中、心臓病といった病に途中で断ち切られることなく、生物としての予備能を最後まで使い切って終えることができた証――。それは20世紀以降の医学と公衆衛生が到達したゴールだとしている。
必ずやってくる最期の下り坂をいかに緩やかに、苦痛なく降りきれるか。それは、「どう生きるか」につながっているようにも思うと結んでいる。



