「風邪は万病のもと」という言葉はよく知られるが、歯周病があると風邪を引きやすくなることはあまり知られていない。歯周病を起こす細菌や口の中の炎症が全身の免疫力を弱め、ウイルスが侵入しやすい環境を作ってしまうという。
こうした危険性を指摘するのは、40年間の医師生活で2500人の最期を看取った医師・長尾和宏氏だ。長尾氏は「重要なのは、毎日の歯磨きと口腔ケアだ。歯だけでなく、噛む力や舌の力を維持することも欠かせない」と話す。
歯周病は「万病のもと」
歯周病菌は歯にとどまらず、脳に攻め入れば認知症の原因になり、心臓を襲えば心筋梗塞の原因になる。動脈硬化やアレルギーの原因とも言われ、がんの原因にもなるという。しかし歯周病は予防が可能な病気だ。
「歯磨き=歯を磨く」ではない
ものを食べたり水を飲んだり空気を吸ったりすれば、歯ぐきには自然とプラークという歯垢が溜まる。この歯垢の中には億単位の細菌やウイルスが存在する。口の中は「ばい菌だらけ」で、口臭も歯周病菌の仕業。部屋をこまめに掃除しなければ汚部屋になるのと同じで、口の中もきれいにする必要がある。
ところが医者の歯周病への関心は低く、長尾氏が研修医に「歯は全部で何本あるか知っているか」と聞いたところ、「知りません。50本ぐらいですか」という答えが返ってきた。人間の歯は子どもは通常20本、成人は親知らず4本を含めて通常32本。多くの医者が歯の知識に乏しいと警鐘を鳴らす。
長尾氏は、よりよいセルフメディケーションのためには、メタボ健診を受けなくても、機会があれば歯周病検診を受けてほしいと勧める。自治体が費用を負担して推奨しているところも多いという。
歯磨きで大切なのは「磨くのは歯ではない」ということ。歯と歯ぐきの間には「歯周ポケット」と呼ばれる隙間があり、ここに食べ物のカスが溜まる。そのカスを除去することが歯磨きなのだ。
※本稿は、長尾和宏『病気の9割は自分で治せる!』(PHP新書)の一部を再編集したものです。



