梅雨型熱中症に要注意!気温30℃以下でも湿度でリスク上昇のメカニズムと対策
梅雨型熱中症の原因と対策を医師が解説

まだ真夏ではないからと油断していませんか。実は、気温が30℃以下の梅雨の時期でも、湿度の上昇や暑さへの慣れ不足によって、熱中症のリスクが高まります。だるさや頭痛など「梅雨だる」と見分けにくい症状も、実は熱中症かもしれません。梅雨型熱中症の原因と対策について、中路幸之助医師に伺いました。

梅雨の熱中症は「湿度」が原因、気温だけで判断しないことが大切

熱中症というと、真夏の炎天下で起こるものというイメージをお持ちの方が多いでしょう。しかし実際には、気温がさほど高くない日でも、湿度が急に上がると熱中症のリスクは一気に高まります。これがいわゆる「梅雨型熱中症」と呼ばれるもので、近年、梅雨入りから梅雨明けまでの時期に救急搬送される患者さんが目立つようになってきた印象があります。

なぜ気温が低くても熱中症になるのか。その答えは「湿度」にあります。私たちの体は、汗をかき、その汗が皮膚の表面で蒸発するときに気化熱を奪うことで体温を下げています。ところが湿度が高い環境では、汗をかいてもなかなか蒸発しません。せっかくの体温調節機能がうまく働かず、汗が肌の上に残ったまま、体内に熱がこもってしまいます。これが梅雨型熱中症の基本的なメカニズムです。気温だけで判断するのではなく、湿度や日射、風通しまでを総合的に表す「暑さ指数(WBGT)」で判断することが大切だといわれるのも、このためです。環境省も、WBGTの値に応じて「警戒」「厳重警戒」といった段階を設け、運動や激しい作業の際にはこまめな休息を取るよう呼びかけています。

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暑さに慣れていない体もリスクに

もう一つ、梅雨時期特有のリスクとして重要なのが「暑熱順化」の問題です。人の体は、徐々に暑さに慣れていくことで、効率よく汗をかき、熱を逃がす能力を高めます。この暑熱順化を獲得するには個人差はあるものの、数日から数週間ほどの時間が必要とされています。ところが梅雨の時期は、晴れて急に気温が上がる日と、雨が降って肌寒い日が交互にやってきます。ようやく体が暑さに慣れかけたところで気温が下がり、せっかく身についた順化がリセットされてしまいます。そんなことを繰り返しているうちに、突然訪れる蒸し暑い晴れ間に体が対応できず、思いがけず熱中症を発症してしまうのです。

加えて、梅雨は気圧の変動も激しく、自律神経のバランスが乱れやすい季節でもあります。自律神経は体温調節にも深く関わっているため、その乱れが熱中症のリスクをさらに高めることになります。「まだ梅雨だから」「曇っているから」と油断せず、梅雨入りの頃から熱中症対策を始めましょう。

自宅、入浴後、就寝中も要注意 梅雨型熱中症が起こりやすい場面

最も多い発生場所は「住居」です。意外に思われるかもしれませんが、総務省消防庁の救急搬送統計を見ると、熱中症で運ばれる人の発生場所として最も多いのは、「屋外」ではなく「住居」です。屋外で激しい運動をしているときよりも、何気なく過ごしている自宅のほうが、リスクが見過ごされやすいといえます。

まず気をつけたいのが、エアコンを使わずに過ごしている室内です。「まだそれほど暑くないから」と窓を閉め切ったままにしていると、室内の湿度はあっという間に上がります。特に風通しの悪い北側の部屋や、洗濯物を部屋干ししている空間は注意が必要です。湿度が高いと、たとえ気温がそこまで上がっていなくても、体感的にはかなりの蒸し暑さになり、知らないうちに発汗量が増えて脱水が進みます。

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入浴中や入浴後も、見落とされがちな高リスク場面です。浴室はもともと高温多湿の典型的な空間ですから、長湯をしたり、入浴前後の水分補給を怠ったりすると、気づかぬうちに脱水が進行します。特に高齢の方では、入浴中の発症が命に関わるケースもあるため、お湯はぬるめにとどめ、入浴前後にコップ一杯の水を飲む習慣をつけていただきたいと思います。

就寝中の発症も非常に多く報告されています。人は寝ている間にも思いのほか多くの汗をかいており、寝室の温湿度管理を怠ると、明け方にかけて熱中症を発症するケースが目立ちます。タイマー設定でエアコンを途中で切ってしまう方も多いですが、これがかえって危険を招くこともあります。タイマーに頼らず、控えめな温度設定で一晩中つけておくほうが、結果的に安全です。

屋外では、通勤・通学時のレインコート着用が盲点になります。雨具の内部は汗が逃げず、ほぼ蒸し風呂のような状態になります。傘の使えない場面や自転車通勤の方は、透湿性のある素材のレインウェアを選ぶなど、内部に熱がこもりにくい工夫が必要です。また、雨上がりに急激に気温が上がる日は、地面からの水蒸気で蒸し暑さが増すため、屋外作業や買い物、部活動などでは特に注意が必要です。

「梅雨だる」と熱中症は似ている 見逃してはいけない危険サイン

梅雨の時期に多くの方が感じる「梅雨だる」と呼ばれる不調は、だるさ、眠気、頭痛、食欲不振など、実は熱中症の初期症状と非常によく似ています。だからこそ、見極めが難しく、対応が遅れやすいのです。

両者を見分ける重要なポイントはいくつかあります。一つ目は、涼しい場所で休んだときの変化です。涼しい部屋で横になり、水分を取ってしばらく経っても症状が改善しない、あるいはむしろ悪化しているようなら、熱中症を疑う必要があります。二つ目は汗のかき方の異常です。普段より明らかにベタついた大量の汗が出ている場合や、逆にこれだけ蒸し暑いのに汗がほとんど出ていない場合は要注意です。汗が出なくなるのは、体温調節機能が破綻しかけているサインで、重症化の入り口です。三つ目は皮膚の状態。触ると熱く、赤くなっているようなら体温が上昇している可能性があります。さらに、水分を取っているのに尿が出ない、出ても濃い黄色をしているといった場合は、脱水がかなり進んでいる状態と考えられます。

特に気をつけていただきたい危険なサインがあります。呼びかけへの反応が鈍くなる、ぼんやりして会話がかみ合わない、まっすぐ歩けない、ろれつが回らない、けいれんが起きる、自力で水分を飲み込めない、あるいは明らかな高熱で体が熱を持っている――こうした症状のいずれかが見られたら、ためらわずに救急車を呼んでください。判断に迷ったときは、救急安心センター「#7119」に電話で相談する方法もあります。

軽い症状の段階であれば、まずは涼しい場所へ移動し、衣服をゆるめて、首筋、脇の下、太ももの付け根といった太い血管が通っている部位を冷やしてください。これらの部位を集中的に冷やすことで、効率的に体温を下げることができます。同時に、水分と塩分を少しずつ補給します。それでも改善しない、あるいは自力で水分が取れないようであれば、迷わず医療機関を受診するか救急要請をしてください。「これくらい大丈夫だろう」という油断が、取り返しのつかない事態を招くこともあります。