宮崎県内有数の馬産地である綾町で、生産牧場「吉野牧場」を営む吉野新作さん(45)が、一線を退いた元競走馬を牧場で受け入れ、心を込めて世話をしている。「見捨てることはできない。手が届く範囲だけでも助けたい」と語る。
引き取った馬たちは、乗馬用の馬として再び活躍したり、穏やかに余生を送ったりしている。吉野さんは、そんな「第二の馬生」を支えようと、一頭一頭に手当てなどを行い、汗を流している。
偶然の出会いから始まった引退馬の受け入れ
吉野さんは綾町出身。祖父の代から馬の生産牧場を営む家に生まれた。進学した本庄高校(国富町)では馬術部に入り、卒業と共に実家の牧場で働き始めた。
転機となったのは13年ほど前、競馬ファンからの頼まれごとだった。「競走馬を引退したリズモアという馬を捜してほしい」。気にかけていると、偶然にもリズモアは綾町で行われた草競馬のイベントに新しい馬主に連れられて参加していた。
ファンが馬主からリズモアを買い取り、吉野さんの牧場が預かって育てるようになった。しばらくすると飼育に必要な費用は期待できなくなったが、「牧草は自家栽培している。食わせてやることはできる」と腹をくくり、「自分が面倒を見ます」とリズモアを引き取ったという。
「すべての馬を助けることはできない」という自問自答
世の中には引退した競走馬はほかにもおり、「すべての馬を助けることはできない」「1頭だけ引き取るのは偽善ではないか」と自問自答もした。ただ「馬の命を生かす手伝いをしたい」という思いが勝った。
取り組みは徐々に知られるようになり、依頼を受けてほかの引退馬も引き取ったり、預かったりするようになった。食用になる予定だった馬を肥育場で出荷1週間前に見つけて引き取ったこともある。
有馬記念4着のツルマルツヨシも預かる
2017年からは、1999年に行われた日本競馬最高峰のGI「有馬記念」で4着に入ったツルマルツヨシも預かった。今では10頭以上を牧場でけい養するまでになり、牧場にいる繁殖牝馬約20頭と種牡馬4頭などを世話しながら、元競走馬たちの様子を見て支えている。



