16日の自民党役員人事と17日の内閣改造を巡り、自民党所属議員に希望ポストを尋ねた「役職希望アンケート」に注目が集まっている。希望調査自体は以前から行われており目新しいものではないが、今回は高市早苗首相(自民党総裁)が回答を自ら読み込み、人選に反映させたためだ。高市首相を巡っては過去に、当選2回の若手議員が希望欄に「苦労する仕事」とだけ書いたところ、本当に難題を抱える部会長に抜擢したこともある。
首相が自ら回答を精読
高市首相は今回、アンケートを人選で重視した。17日の記者会見では、当選回数の多寡を問わず幅広く所属議員に配布したアンケートに「私自身、かなり時間を使ったが、つぶさに目を通した」と説明。本人の専門知識や課題意識を吟味し、「政策に加えて、積極性と情熱を見極めた」と述べた。
参院議員と日本維新の会を除く閣僚は「ほぼ全て」がアンケートで希望したポストに就いたという。希望調査は従来、若手議員が主な対象だった。令和5年9月の内閣改造直前には、若手議員の秘書は「1~4期生向けだと思う。今回はまだ希望調査票が来ていない」と漏らしていた。今回は岸田文雄元首相らにも届いており、従来より対象を広げた形となるようだ。
「苦労する仕事」で本当に苦労
高市首相自身、過去に希望調査を使った人事に関わっている。平成25年の党人事では、当時当選2回の若手だった斎藤健元経済産業相が「希望役職アンケート」に、具体的なポストではなく「苦労する仕事」とだけ記した。すると、党の農林部会長への就任を告げられたという。
当時は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への対応を抱え、農林部会長は難しいかじ取りを迫られるポストだった。しかも斎藤氏は農林政策を直接担当した経験がなく、通常は当選3~4回程度の議員が就く役職に当選2回で登用された。当時の政調会長が高市首相だった。高市首相は農林部会長を希望する議員がいないなかで、斎藤氏の記述に目を留めた。就任を打診した際には「ご希望通りに、『苦労』をして下さい。良い政策を期待しています」と伝えたという。
希望の書き方に個性
希望の書き方にも議員の個性が出る。柴山昌彦元文部科学相は過去の希望調査で、第5希望まで記入できるなか、希望欄に「財務金融部会長」だけを書いた。その後、柴山氏は実際に財務金融部会長に就いたという。
今回のアンケートも政府、衆院、党の役職について最大第5希望まで回答できる形式だった。政府では大臣、副大臣、政務官、衆院では常任・特別委員長や審査会長、党では常設機関の役職が対象となった。一方、首相補佐官や委員会理事などは対象外とされた。
自民党本部職員を長年務めた政治評論家、田村重信氏は産経新聞の取材に「派閥があった時代は、議員の意向を派閥が吸い上げ、力量も見ながら人事に反映していた。今回は派閥解消を受け、首相が議員一人一人の意向を直接把握する形となり、アンケートは極めて大きな意味を持った」と指摘。「政策に詳しいことと、実際に政策を動かす政治力は別だ。調査票だけでそこまで見極めるのは難しい」とも語った。
小泉防衛相は「出していない」
小泉進次郎防衛相は18日の記者会見で、アンケートに防衛相留任を強く希望する内容を書いたとの一部報道に「全くの事実無根」と反論した。アンケート自体を提出しなかったという。
アンケートを提出しなかった理由については、閣僚の立場で役職希望を出すのは「おこがましいと考えた」と指摘。高市首相と直接意思疎通するなかで、防衛相としての思いを伝えたと説明した。報道したメディアはその後、小泉氏がアンケートを提出していなかったとして内容を訂正し、謝罪した。



