イスラエル極右閣僚、総選挙で支持拡大狙う「ボスのように振る舞えば尊敬される」
イスラエル極右閣僚、総選挙で支持拡大狙う

今月27日のイスラエル総選挙を前に、極右のイタマル・ベングビール国家治安相が、極めて精力的かつハイペースな選挙戦を展開している。高校生に銃の形をしたキーホルダーを配布したほか、パレスチナ人受刑者を「死刑にする」と脅す宣伝動画も公開した。

選挙公約と支持拡大

選挙公約には、イスラエルが占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸やガザ地区に住むパレスチナ人に退去を促すことや、イスラエル人を死亡させる攻撃で有罪となったパレスチナ人に死刑を執行することなどが含まれている。かつてはイスラエルの極右の中でも問題児とみなされていたベングビール氏は、今も社会に分断をもたらす存在として強い影響力を保っている。

世論調査によると、ベングビール氏が率いる極右政党「ユダヤの力」は、国会(一院制、定数120)で8~9議席を獲得する見通しで、単独政党として出馬して初めて議席を獲得することになる。2022年総選挙では、他の極右政党との統一名簿で選挙に臨み、6議席を割り当てられた。

過激な言動と影響力

ベングビール氏は閣僚に就任する前、テロ組織の支持や人種差別の扇動などの罪で少なくとも8回、有罪判決を受けている。4年前にベンヤミン・ネタニヤフ首相の連立政権に加わって以来、ベングビール氏は政治的影響力が急拡大する極右の過激な主張を象徴する存在となった。

エルサレムのにぎやかなマハネイェフダ市場では、商店の上にベングビール氏の顔を大きく描いた横断幕が掲げられている。同市場でAFPの取材に応じたオル・ナフマンさん(23)は、「要するに、彼は率直にものを言う。私たちは彼が本当に大好きだ」と語った。「私たちは、こういう人物のために闘い、投票したい。彼は私たちのイデオロギーや信念を体現している。イスラエルのユダヤ的性格、イスラエルの勝利、経済的な安定、そして誰もが恐れることなく自分たちの土地を自由に歩ける国を実現することだ」と続けた。隣にいたナフマンさんの友人は自動小銃を携え、同意するようにほほ笑んだ。

警察を所管する国家治安相として、ベングビール氏は20万人以上のイスラエル人が銃を入手できるよう支援してきた。また、イスラエルの刑務所で服役しているパレスチナ人の待遇が悪化していることを頻繁に自慢している。さらに、閣僚としての立場を利用し、イスラエルが複数の戦線で繰り広げる戦争において、政府がより強硬な立場を取るよう働き掛けてきた。

若者の支持と批判

パレスチナ人への適用を想定した死刑法の成立を主導したベングビール氏は、絞首刑に使う縄をかたどった襟章を誇らしげに身に着けている。同法が国会で可決された際にはシャンパンを開けて祝い、自身の50歳の誕生日には絞首刑用の縄を模した飾りをあしらったケーキで祝った。弁護士から政治家に転身したベングビール氏は若い頃、極右過激派組織を支持していたことを理由に兵役に就くことを禁じられた。ベングビール氏は現在、総選挙でネタニヤフ氏の陣営が再び勝利した場合、国防相のポストを要求すると表明している。

接戦が予想される総選挙では、50万人以上の若者が初めて投票することになる。調査によると、その圧倒的多数が中道右派または右派を自認している。イスラエルのニュースサイト「Yネット」が公表した初投票者543人を対象とする世論調査では、約16%がベングビール氏の「ユダヤの力」か、ベツァレル・スモトリッチ財務相率いる極右政党「宗教シオニズム」を支持した。

9月にテルアビブ近郊の高校で行われた模擬選挙には、ベングビール氏を含む候補者たちが参加した。この際、ユダヤの力の活動家らは、銃の形をしたキーホルダーを生徒たちに配布した。ベングビール氏が進めてきた銃所持許可制度の規制緩和を連想させるものだった。ベングビール氏が共有した映像には、黒い服を着た数十人の男子生徒が歓声を上げ、ユダヤの力の党旗を振る姿が映っていた。

挑発的な戦術と反響

ヨルダン川西岸にある極右思想の支持者が多いことで知られるユダヤ人入植地キルヤトアルバに住むベングビール氏は、総選挙を前に、従来の支持基盤以外の地域でも選挙運動を展開している。イスラエルで最も世俗的でリベラルとされるテルアビブで最近開かれた英語話者向けのイベントで、ベングビール氏は「ボスのように振る舞えば、尊敬される」と語った。口笛や拍手で迎えられて登壇し、両手でハートの形を作ったベングビール氏は、ベドウィン(アラブ系遊牧民)の家々を取り壊したことや、パレスチナ人受刑者への食事を減らしたことを自慢した。「(刑務所に)入ってくる時は太っているが、出ていく時は痩せている」と述べ、自身の体重についても冗談を飛ばしながら笑みを浮かべた。

ベングビール氏は最近、笑顔のパレスチナ人たちがベルトコンベヤーに乗ってイスラエルの刑務所に入り、泣きながら痩せ細った姿で出てくる人工知能(AI)生成動画を投稿したが、激しい批判を浴びて削除した。10月には有罪判決を受けて服役しているイスラム組織ハマスの幹部、ハッサン・サラメ受刑者に対し、「殺してやりたい。死刑にしてやりたい」と脅迫する動画を投稿。イスラエルの中央選挙管理委員会は、選挙用プロパガンダに該当し、選挙法に違反したとしてベングビール氏に罰金の支払いを命じた。最近公開された一連のAI生成動画には、ガザのがれきの中に座る高齢のパレスチナ人男性の前に、ベングビール氏の姿をした魔人が現れ、フランスのパリに移住したいという男性の願いをかなえるものもあった。フランス政府はこの動画を非難し、ベングビール氏がフランスへの入国を禁止されていることを指摘した。

エルサレムのマハネイェフダ市場を訪れていた人々の目には、極右が期待の持てる選択肢として映っていたようだが、ベングビール氏の挑発的な言動を懸念する人もいた。ラマトガン出身のシュロモさん(42)はベングビール氏について、「彼は激しすぎる」とした上で、彼のような人物は必要だが、イスラエルは世界の他の国々と協力していく必要があると指摘した。シュロモさんは、前回の総選挙でネタニヤフ氏に投票したが、今回はスモトリッチ氏に投票するかもしれないという。エルサレム在住のマイケルさん(37)も同意見だった。「彼(ベングビール氏)は愚かな男ではないと思う。だが実際には、票を集めるために愚かなことを言っている」と語り、「それは非常に効果的だが、イスラエルの経済と外交に大損害を与えている」と付け加えた。