2025年9月13日、天皇、皇后両陛下と長女愛子さまが長崎市の恵の丘長崎原爆ホームを訪れ、入居する被爆者と交流した。戦後80年にあたり、沖縄、広島に続く戦没者慰霊と記憶継承の旅路の一環だ。
皇后さまが見せた姿勢
この日、現場で印象的だったのは、車いすの被爆者と視線を合わせようと、ひざを大きく曲げ、かがみ込むようにして声をかける皇后さまの姿だった。記者が目を離せなかったのは、その深く中腰の姿勢が長く続いたことだ。
この年、両陛下は4月の硫黄島を皮切りに、6月に沖縄と広島、9月に長崎、10月に東京都慰霊堂と、太平洋戦争の被害が大きかった地を訪れた。両陛下にとって長崎訪問は即位後初めてで、初訪問となる愛子さまも同伴した。
被爆者との懇談
ご一家は9月12日に長崎県に入り、13日に恵の丘長崎原爆ホームを訪問。約350人の被爆者が暮らしており、当時の最高齢は105歳だった。ご一家はこのうち8人と順番に懇談した。
14歳で被爆した町田エイ子さんは、原爆投下の翌日、数キロ離れた場所まで歩いた際、周囲に赤ちゃんや動物の遺体が転がっていたことや、臭いがひどくて1週間ほど食事がのどを通らなかったと話し、「言葉では言い表せないほどでした」と当時の様子を伝えた。天皇陛下は「つらい思いをされましたね」、皇后さまは「(当時の)写真を見ましても、言葉がないですね」と話したという。
5歳で被爆した草野タカ子さんは、くしゃくしゃに折りたたんだメモを手に懇談に臨んだ。メモには、ご一家に伝えたい思いが紙いっぱいに、細かい字で記されていた。この日の懇談者で最高齢の春野ハルさん(当時98)は、爆心地から約1・6キロで被爆した体験を伝え、愛子さまから「ご無事で良かったですね」と声をかけられた。
被爆者と向き合う姿勢
現場で取材していた記者は、被爆者と向き合うご一家の姿勢に注目した。「あれだけ深く、中腰の姿勢を続けるのは大変なのでは」と感じたという。被爆者は全員が高齢のため、目線を合わせるために自然とそうした姿勢になったとみられる。



