政府は「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2026」の原案を公表し、閣議決定に向けて議論を進めている。骨太方針の原案を確認する限り、労働時間規制の緩和という文言は見られない。示されているのは労働時間法制について議論を進めるという方向性である。
一方、雇用・労働に関する施策は進んでいる。障害者雇用の促進、育児休業制度の利用促進——働き方改革関連法の施行から7年が経ち、すでに職場ではさまざまな改革が進められてきたはずである。これまでの施策を土台に、職場のさらなる進化が期待されるが、大きな誤算がある。過去から続く価値観が刷新されずに制度だけ変えても、矛盾した未来しか見えてこないということである。本稿では、この古い価値観を「世界線」と表現する。
労働時間規制緩和の検討が示す矛盾
その象徴的な出来事の一つが、まさに労働時間規制の緩和の検討である。今回は、骨太方針の背景に垣間見える、働き方改革の誤算について確認したい。
働き方改革によって、働きやすくなったと感じる人は一定数いるかもしれない。年10日以上の有給休暇を保有する社員は、年5日以上取得することが職場に義務付けられた。有給は以前より取りやすくなったし、残業についても上限規制が強化されたため、労働時間が短くなったと感じる人もいるはずである。働き方改革は一定の成果を上げているようにも見える。
しかし、高市早苗氏からは労働時間規制の緩和検討の指摘が出た。働き方改革が進んできた流れと逆行しているように感じるが、厚生労働省が公表した「働き方改革関連法施行後5年の総点検(結果概要)」によると、全体の10.5%が労働時間について「増やしたい」と答えている。
「減らしたい」と答えた人は30.0%なので、減らしたい人のほうが多いものの、「増やしたい」人が1割強いることも無視できない。
労働時間を増やしたい背景にある収入面の事情
内容を見てみると、増やしたい人の6割以上が、労働時間は週35時間以下と比較的短い人たちである。また、労働時間を増やしたい理由の中には「たくさん稼ぎたいから」(41.6%)、「所定労働時間以外の労働分の収入(残業代)がないと家計が厳しいから」(15.6%)などの意見も見られる。
中には「業務を通じて知識や経験・スキル・技術を高めたいから」(7.0%)といった理由の人もいるが、労働時間を増やしたいと考えている背景には、収入面の事情があることがうかがえる。
労働時間を増やしたいと考えている背景にあるのは「長く働けば給与は増えるもの」という、働き方改革に取り組む以前から続いている世界線である。有給取得を義務付け、残業が減ることは働き手にとって喜ばしいことのように見えるが、給与体系は時間連動型なので収入が減ってしまうという矛盾が生じることになる。労働時間を増やしたいと思う人が、一定数出てきて当然である。
「改革」と呼ぶには足りなかったもの
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