作家の橘玲氏が近未来小説『プアジャパン』(プレジデント社)で描いた衝撃的なシナリオが話題を呼んでいる。同書は、インフレによって住宅ローン破産が激増し、消費税率が30%にまで引き上げられた日本を舞台に、それでも若者の8割が「幸せ」と答える逆説的な社会を描いている。橘氏は「同書はあくまでフィクションだが、なってほしくないと否定できない自分がいる」と語る。
住宅ローン破産の急増と銀行の破綻
小説の中で、金利が上昇し始めると、変動金利の長期ローンでマイホームを購入していた多くの人々が返済不能に陥る。ローン金利が10%台に達したことで、毎月の返済額は2倍以上に膨れ上がった。銀行は抵当物件を競売にかけ、東京や京都などの人気地区は外国人投資家が買い占める一方、地方物件は買い手がつかず、地方銀行や信用金庫が不良債権を抱えて次々と破綻した。政府には金融機関を救済する体力はなく、個人も法人も銀行口座を解約し、ステーブルコインや海外株式、金、ビットコインで資産を保有するようになった。
「ブラックウェンズデー」と救国内閣の成立
財政赤字の悪化により日本がIMF管理下に置かれるとの憶測が流れ、官邸は機能不全に陥り、国会は紛糾した。株価と国債価格が暴落し、円が1日で10円以上下落する「ブラックウェンズデー」が発生。その後、超党派の救国内閣が成立した。小説の主人公は大手電機メーカーの技術者で、住宅ローン破産は免れたものの、中国メーカーとの競争に敗れ、リストラの波に直面する。
消費税率30%と若者の幸福
財政悪化を背景に消費税率は30%に引き上げられる。しかし、この厳しい状況にもかかわらず、若者の8割が「幸せ」と答えるという逆説的な結果が示される。橘氏は「フィクションでありながら、現実になり得る可能性を否定できない」と述べ、このシナリオが単なる妄想ではないと指摘する。
現実との類似点と警告
橘氏は、現在の日本の低金利政策や財政赤字、人口減少などの状況が、小説の前提と重なるところがあると指摘する。同書は、インフレと金利上昇がもたらす社会の変容を警告する一方で、若者が新たな価値観で幸せを見出す可能性も示唆している。



