NHK(日本放送協会)の新会長に今年1月就任した井上樹彦氏が、公共放送の未来像について東洋経済のインタビューに応じた。政治部記者出身で内部昇格した井上会長は、設立101年目を迎えるNHKが直面する受信料収入減少、インターネット配信強化、グローバル展開などの課題について語った。
スポーツ・エンタメは公共放送の重要な役割
井上会長は、今年のサッカーワールドカップ北中米大会で日本代表全試合を地上波・BSで生中継し、全104試合を放送した理由について、「サッカーという世界最高峰のスポーツを伝えたいという一貫した思いがある」と説明。NHKは1978年アルゼンチン大会からW杯を放送しており、日本初出場の98年フランス大会では全64試合を放送した。民放と違いCMがないため、ハーフタイムの選手の表情や試合後のインタビューまで届けられる利点を強調した。
1次リーグ第3戦スウェーデン戦では、ネット配信「NHK ONE」で782万回再生(7月2日時点)を記録。これまでの最高だった25年大みそかの「紅白歌合戦」749万回を上回り、現在も伸びている。スマホ向けにハイライトを通常の5分から2分に短縮するなど、配信を意識した編集を行った。
コンテンツの質・量は落とさない
井上会長は、「報道だけに集中すべき」との意見に対し、「多くの人々に感動を届けるスポーツやエンタメは公共放送の重要な役割」と述べた。日本サッカー協会の宮本恒靖会長との対談では、テレビの役割が日本サッカー強化に貢献した点で一致。宮本会長自身が少年時代にマラドーナのゴールを見てサッカーの魅力を知り、それが02年日韓大会につながったとし、同様に現在の小学生がスマホで何度も再生して将来の選手になる可能性を指摘した。
一方、スポーツ放送権料の高騰については、「金に糸目をつけずというわけにはいかない。1つの強力なコンテンツのために他に支障が出てはいけない」と慎重な姿勢を示した。WBCでネットフリックスが放送権を買った事例を挙げ、地上波で見られない不満があったことにも言及。高校野球については、夏の甲子園の高視聴率や今春センバツの初ネット配信を紹介し、「郷土の代表であり、ヒーローが生まれる大事なコンテンツ」と評価した。
25年度決算と今後の見通し
25年度決算では、単体事業収入6130億円(前期比微増)、事業収支差金は318億円の不足で3年連続の赤字。27年度の収支均衡達成について問われたが、記事は有料会員限定のため詳細は割愛された。井上会長は受信料収入減少に対応する業務効率化や、必須業務となったネット配信の強化、グローバル市場へのコンテンツ配信などの課題に取り組むとしている。



