長崎大学准教授でスピーチコンサルタントの矢野香氏は、リーダーが無意識に使う「~と思います」という文末の5文字が、周囲からの信頼を損ねる原因になると指摘する。人は日常的に使う言葉で判断されるため、この口癖を改善することで、より頼りになるリーダー像を築けるという。
意味のない口癖「あー」「えー」と「~と思います」
矢野氏によれば、口癖には意味のあるものとないものがある。意味のない口癖の代表例は「あー」「えー」といった言いよどみで、これらは明らかにノイズ(雑音)なので意識して削除すべきだ。
さらに、語尾がすべて「~と思います」になるのも、よくある意味のない口癖だという。「やろうと思います」ではなく「やります」と言い切るほうが、リーダーとして堂々とした言葉遣いになる。矢野氏は「できるだけ回数を減らしましょう」とアドバイスする。
意味のある口癖は価値観を表す
逆に、残したいのは意味のある口癖の中でも、その人の価値観を表しているものだ。例えば、有名予備校講師の林修先生の口癖「いつやるか? 今でしょ!」は、テレビCMや番組で繰り返し使われ、流行語大賞にもなった。「やるべきことは後回しにせず、今すぐやった方がいい」という彼の価値観がこの一言に凝縮されている。
また、ある女性クライアントの口癖は「よく考えて」というフレーズだった。理由を探ると、何でもすぐリーダーに聞いて自分で考えない若手メンバーに内心苛立っていたという。「自分の頭で考え、責任を持って行動するべき」という彼女の価値観が現れている口癖といえる。
口癖チェックで無意識を可視化する方法
矢野氏は、口癖をチェックすることで余計な癖を削除し、リーダーらしい堂々とした話し方に修正すると同時に、自分が何を大切にしているかを確認できると述べる。具体的なチェック方法として、次の2つを挙げている。
①「私の口癖ってある?」と周囲の人に尋ねてみる。自分では気づかない癖でも、他人はよく見ている。率直に聞くと意外な発見があるかもしれない。
②会議やミーティングで自分の発言を録音し、文字に起こす。長さは3分以上あると理想的で、3分間に複数回出てきた言葉をリストアップすると無意識の口癖が見えてくる。
矢野氏は「口癖は、普段なかなか自覚することができません。自分では気づかないまま、印象を決めている。それが口癖です。まずは現状を知ることが改善の第一歩。このワークで無意識を可視化しましょう」と強調する。
「この人になら任せられる」と思われる話し方
矢野氏は、自身の著書『いい人で終わらないリーダーは「決めてから話す」 信頼される話し方の本質』(大和書房)の中で、リーダーが信頼を得るためには「決めてから話す」ことが重要だと説く。つまり、曖昧な「~と思います」ではなく、明確に「~します」と言い切ることで、周囲に「この人になら任せられる」と思わせることができるという。
また、自分の「キャッチコピー」を作ることも有効だ。自分の価値観を凝縮したフレーズを繰り返し使うことで、周囲に自分の良さを効果的に伝えられる。矢野氏は「口癖は単なる癖ではありません。あなたが何を大切にしているかを無意識に語っています」と結論づけている。



