ローソン、AIやビデオ通話で高齢化団地の課題に挑む新店舗を日野市にオープン
ローソン、AIやビデオ通話で高齢化団地の課題に挑む新店舗

高度成長期を象徴する大規模団地が「オールドニュータウン」に変わりゆく中、ローソンは8月4日、東京都日野市に「ハッピーローソンタウン日野高幡台店」をオープンした。AIコンシェルジュやビデオ通話デリバリーなど、デジタルとアナログを融合させ地域課題に挑む。

高経年化・高齢化で転換期を迎えるマンモス団地の課題

日本の高度経済成長を象徴した郊外のマンモス団地が、いま大きな転換期を迎えている。全国約1,400団地、69万戸の賃貸住宅を管理するUR都市機構でも団地の高経年化・住民の高齢化は進んでおり、築40年以上が経過した住宅に住み続けている方は多いという。

1971年に入居が開始された東京都日野市の「高幡台団地」もその一つだ。ピーク時には1,600戸、6,000人を超えた人口も、現在は高齢化と人口減少という大きな波のなか、移動手段確保や買い物支援、コミュニティの維持、そして防災環境といった深刻な社会課題に直面している。

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そんな「オールドニュータウン」に、一筋の光を灯そうとする試みが始まった。8月4日、ローソン、KDDI、UR都市機構、そして日野市が連携し、『ハッピーローソンタウン』構想の集合住宅型として初となる店舗「ハッピーローソンタウン日野高幡台店」をオープンさせたのだ。

店内に“行政の窓口”

「ハッピーローソンタウン日野高幡台店」に足を踏み入れると、まず目を引くのが、43型の大型サイネージに映し出されたAIキャラクター「カエデ」。行政や地域の情報を音声や画像で案内してくれるAIコンシェルジュだ。

「コンビニでどんな証明書が出せますか?」「住民票はどうやって取るの?」「ごみの分別一覧見せて」といった質問を投げかけると、カエデが音声や図解でアドバイスしてくれる。現場で実際に対話してみたが、音声認識はスムーズで、行政特有の複雑な案内も視覚情報と組み合わさることで非常に分かりやすくなっている。

さらに、AIだけでは解決できない複雑な相談や、プライバシーが気になる相談がある場合は、個室ブースに設置された「Pontaよろず相談所」が真価を発揮する。ここではリモート接客システムを介し、日野市役所の担当者や、通信、金融、インフラなどの専門スタッフとビデオ通話で直接話すことが可能だ。

デモンストレーションでは、実際に市役所の窓口と繋ぎ、市民相談を受ける様子が公開された。話を開始すると、画面越しに市役所の職員のAIアバターが現れ、「どの窓口に行けばいいのか」という初歩的な疑問から、暮らしの悩みまで丁寧に応対してくれる。必要に応じてオンカメラでの対応も行うという。

あえて“店員”が届ける「ビデオ通話デリバリーサービス」

今回の目玉の一つが、団地住民の一部を対象とした「ビデオ通話デリバリーサービス」の実証実験だ。これは住民に貸与される専用のSIM搭載タブレットを使って、コンビニで取り扱っている食品や飲料、生活必需品を注文できる仕組みとなる。

いまの時代、便利なデリバリーサービスは数多く存在する。しかし、ローソンがこだわったのは「店舗の従業員が自ら届ける」という点だ。「顔馴染みがない方が来ることに対して抵抗感を持つ高齢者の方も多い。店舗の従業員であれば、普段から顔を知っている安心感がある」と、現場の担当者は語る。いわば昭和の時代にあった「御用聞き」の精神を、21世紀のテクノロジーで再定義した形だ。

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専用のメニュー画面のみならず、操作に不慣れな人のために、ボタン一つで店員と繋がり、「いつもの豆腐と、水1本お願い」と会話ベースで注文することも可能。決済も、実証実験期間中はあえて“現金のみ”に設定されている。これは、デジタルマネーに馴染みの薄い世代が、お店で買い物をするのと同じ感覚で利用できるようにとの配慮だ。

営業時間は10時〜16時を予定。配達時間は、注文から最短30分後、最長2時間後まで指定できる。置き配は非対応。団地全体が配達エリアとなっており、ローソンから歩いて片道最長7〜8分程度。実証実験には高齢者のほか、子育て世代も参加予定とのこと。単に商品を届けるだけでなく、“見守り”の機能も兼ね備えたサービスを目指しているという。

スーパーと薬局もローソンに。“生活インフラ”としての基盤を担う

品揃えも、通常のローソンとは一線を画している。食品スーパーの「コモディイイダ」と連携し、野菜、精肉、冷凍魚など約90品目の生鮮食品をラインアップ。「今晩の夕食の材料」がここで一通りそろう形だ。

また、9月1日には店内に「クオール薬局」がオープン予定。調剤だけでなく、在宅医療の相談や介護食の販売も行う予定となっている。店内のよろず相談所システムを活用した「オンライン診療」の実証実験も検討中で、10月をめどに近隣病院などとの提携を調整中だという。

さらに、日々の買い物の利便性を高めるサービスも導入されている。コンビニ初導入となる店舗内ロッカーを活用した「駅チョク便」は、専用ECサイトで注文した商品を店内の多機能ロッカーで受け取れるサービスだ。

変わりゆくマンモス団地を次世代に繋ぐために各団体が手を取り合う

オープンセレモニーでは、日野市長の古賀壮志氏が「先日、視察をさせていただきまして、もはやコンビニはお買い物をするためだけのものではなく、地域や関係者のみなさまが一堂に力を結集して育てていくべき社会のインフラだと改めて感じました」と、その意義について述べる。

都市再生機構(UR都市機構) 理事の高藤喜史氏は、2014年から地域包括ケアシステム構築を進めていることに言及。団地を地域資源として活用し、多様な世代が生き生きと暮らし続けられる“ミクストコミュニティ”の実現を目指していると伝える。高幡台団地は2016年度から拠点化に着手しているという。

KDDI 執行役員 パーソナルグロース事業本部長の村本伸弥氏は、今回の取り組みが集合住宅型の団地を対象とした初めての事例であることを強調する。さらに、デリバリーサービス・AIによるリモート相談・行政とのつながりを可能にするシステムを紹介し、10月から自動配送ロボットの実証実験を行うことを発表した。

ローソン 代表取締役社長の竹増貞信氏は、「地域の課題をローソンが一緒になって解決し、高齢化・過疎化が進むオールドニュータウンの再活性化に取り組むことがハッピーローソンタウンの構想」と挨拶。店舗の特徴について説明したのち、「平時は便利で快適で、あたたかくつながれるお店。そして有事は、本当に安心できるお店。そういったことを、このハッピーローソンタウンでは目指している」とまとめる。

テクノロジーの活用が進む一方で、店内にはどこか懐かしい小上がりのあるイートインスペースが設置されている。8人が座れる畳のようなスペースには、約50冊の絵本コーナーも併設されており、地域のお年寄りや子ども連れが自然と集まり、交流を促す設計になっている。ここでは、スマホ教室や健康イベントの開催も予定されており、単に物を買う場所ではなく、かつての「広場」のような役割を担おうとしている。

さらに竹増氏は、「私、先日の熊本地震の翌朝に熊本に入りました。日本はいろいろな場所で震災が起こります。そんな有事のときにも頼ってもらえる存在を目指しています」と熊本地震の被災地視察を引き合いに出し、有事における店舗の重要性を強調した。

「ハッピーローソンタウン日野高幡台店」は“災害支援ローソン”としての機能を有している。屋根には太陽光パネル、店内には業務用蓄電池を備え、停電時でも最低限の店舗運営と通信環境を維持する。通信には衛星通信「Starlink」を活用し、固定回線が途絶えてもフリーWi-Fiの提供が可能だという。

店内の厨房を活用した「災害時用おにぎり」の提供や、凝固剤を使用した災害時用トイレの常備など、団地住民が災害時の支援拠点として頼れる機能を備えている。さらにKDDIは、関係各所とAIドローン用のドローンポート設置の話も進めているという。これは定期的なAIドローンの遠隔運航を行うことで、住民の見守りやインフラの点検を実施するものだ。

そして竹増氏は最後に、「ローソンだけではなく、やはり、コモディイイダさん、クオールさん、日野市さん、UR都市機構さん、KDDIさん、みんなで街づくりを行っていきたい。みなさま方のご意見をいただきまして、全力で地域の活性化、社会課題の解決に挑んでいきたいと考えております」と協力を呼びかけた。

テクノロジーで効率化できる部分は効率化し、それによって生まれた余力を人間によるあたたかいサービスに充てる。最新のデジタル技術を活用した利便性と、昔ながらの人と人とのつながりを、コンビニを中心に生み出していく。このハイブリッドなアプローチは、これからますます進む日本の少子高齢化社会に対する解のひとつとも言えそうだ。