近大附属、探究教育を強化し14のコンピテンシーを育成 全国大会で準グランプリ
近大附属、探究教育強化で14のコンピテンシー育成 全国大会準優勝

近畿大学附属高等学校・中学校(大阪府東大阪市)は昨年度、中学の探究教育を担当する「教育改革推進室」を「特色教育担当室」と改称し、体制を強化した。既に、生徒の非認知能力を測定するためのAIの導入や、求められる14のコンピテンシーの意識化に着手し、中高6年間を見通した探究プログラム作りも検討中だ。

探究学習の担当部署を刷新、新たな取り組みもスタート

同校は2011年に、生徒の「生きる力」を養うための授業改革をスタートさせ、20年には、改革の集大成として中学3年間の探究プログラムである「総合表現」と「総合探究」の授業を設置した。その授業の中で生徒たちは、自校教育、人物探究、企業探究、新聞作成、自分史作成などに取り組み、「書く」「まとめる」「調べる」「話し合う」「発表する」という力を養ってきた。

昨年度は、こうした探究教育をさらに強化するため、中学の探究教育を担当する部署「教育改革推進室」を「特色教育担当室」と改称して、担当教員を増やし、指導体制を整えた。

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中学校特色教育主任を務める片木真也教諭は、「前部署から探究教育に携わる中で、客観的な評価の確立や、『人に愛される人、信頼される人、尊敬される人になろう』という校訓を具現化するための取り組みが足りないなどの課題があると感じていました」と語る。「そこで、学校外のさまざまな場に足を運んで探究教育について学んでいくうち、評価よりも、生徒たちにコンピテンシーを意識させることに主眼を置くべきではないかと思い至ったのです。本校が目指す人物像に近づくためのコンピテンシーを意識させ、数値では測れない非認知能力を養っていきたいと考えました」

そこで昨年度は、新たに生徒の非認知能力を測定するためにAIを活用したツールも導入した。「本校の校訓をもとに、感情のコントロール、寛容、誠実さ、組織への働きかけ、論理的思考力、個人的実行力、自己効力などの14のコンピテンシーを評価項目に設定しました。コンピテンシーごとに、その定義と力を伸ばすためのキーワードを記載した掲示物を作成し、日常的に生徒の目に入るように教室や廊下に貼っています。探究活動をする際には、今日の取り組みではどんな力を伸ばすのかといった声掛けをし、コンピテンシーの定着を図っています」と、片木教諭は話す。

全国発表会でも成果を残す探究学習の取り組み

こうした探究教育の取り組みは、生徒たちの活動に形となって表れている。今年2月、「教育と探求社」が主宰する探究学習発表会「クエストカップ2026全国大会」が開催され、予選を勝ち抜いた中2生1チームが「進路探究部門(ロールモデル)」に初出場して準グランプリを獲得した。また、中3生1チームも「企業探究部門(コーポレートアクセス)」に出場し、同部門への同校の出場実績を5年連続6回目とした。

準グランプリを獲得したのは、日清食品創業者である安藤百福について発表した7人グループ。ロールモデルの課題は、先人の生きた軌跡から学び、自己の価値観を探求することだ。メンバーの山下雅翔君は、「安藤百福の人生を分かりやすく伝えつつ、他のチームと差別化し、楽しみながら聞いてもらえるストーリーを考えるのが最も難しかったです」と振り返る。

探究の過程では、他のメンバーと意見が分かれ、数時間にわたる議論となったこともあるそうだ。「時間をかけて意見交換したからこそ新しい発想も生まれたと思っています。ディスカッションしている時間も楽しかったです」

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クエストカップの取り組みを終えて、山下君は「スライドづくりやプレゼンのスキルが上がったし、どうすれば人に伝わるかを考えられるようになりました」と話す。「やはり他校の生徒と全国大会で競い、外部の大人に評価してもらえる場に出る機会があったからこそ、レベルアップできたのだと思います。貴重な経験ができました」

同じくメンバーの脇本美桜さんは、予選突破後に企画を練り直した際、「人に伝えることの難しさを実感しました」と話す。「自分ではうまくできていると思っていたのに、客観的な意見を聞いてみると、分かりにくさを指摘されました。足りないところに気付けて、発表内容を考え直せたのが良い結果につながったのではないかと思います」

「頑張ってみれば結果が出るんだと分かって、次の活動でも自分のできることを精いっぱいにやろうと思うようになりました。ただ、メンバーとあまり積極的に話せなかったことが、今回の反省点です。チームでしっかりと議論しないと良いものはできないと感じたので、この反省を今後の探究活動に生かしていきたいです」

学習転移できる力の育成を次のステージの目標に

同校は、特色教育担当室の設置を機に、中1生向けの新たな探究学習プログラムも導入した。近畿大学卒業生についての探究と、食品企業の協力を得て商品開発やパッケージデザインを学ぶプログラムだ。特色教育担当室室長の野田由紀子教諭によると、2年目の今年は卒業生探究をブラッシュアップしてプログラム内容を深めていくという。「初年度はチームで卒業生について調べてポスター発表するまでが到達点でした。今年は、卒業生の活躍とコンピテンシーの関わりに踏み込んで、取り組みを進めていく計画です」

また、これまでは中学3年間で完結していた探究プログラムを中高6年の継続した取り組みにしていくことも検討中だ。「中学の探究教育は、近畿大学の建学の精神である『実学教育』『人格の陶冶』を柱に、社会に貢献できる力と人格を段階的に育てていくことを目的としてプログラムを組み立てています。この学びを高校でも継続できるよう、進路・探究・表現のプログラムを展開し、さらに、これらが近畿大学内部進学に必須の論文作成、他大学の総合型選抜入試に対応できる取り組みへとつながっていくことを期待しています」と、野田教諭は話す。

「探究学習発表会で成果を残した生徒の言葉からも分かるように、取り組みを通じてさまざまな学びを得ている生徒たちがいます。我々教員の働きかけにより、生徒が自らの言葉でコンピテンシーを語れるようになれば、生徒はもっと変化していくと思います。目指しているのは、身に付けた力を他の分野で使えるようになる、つまり学習転移できる力を養うことです。探究教育の次のステージとして、今後、学習転移できる力を育成するという明確な目標を持って取り組みを深めていきたいと考えています」と、片木教諭は抱負を語った。