「高校無償化」で公立高校が消滅?定員割れ連鎖の実態を西田亮介×安田洋祐が徹底討論
「高校無償化」で公立高校消滅?定員割れ連鎖の実態

2026年4月から始まった「高校無償化」政策が、公立高校の定員割れを加速させ、私立高校への生徒流出を促進している。日本大学危機管理学部教授の西田亮介氏と大阪大学経済学部教授の安田洋祐氏が、この政策の矛盾点と教育現場への影響を徹底討論した。

「無償化」の実態は補助金政策

西田氏はまず、「無償化」という言葉の誤認を誘う表現に憤りを感じると指摘する。「無償と言いながら、実際には授業料のみが対象で完全にタダになるわけではない。実質は一律の補助政策に過ぎない」と述べた。安田氏もこれに同調し、「生徒が負担するはずだった授業料を学校に交付する形を取ることを考えると、実態としては補助金政策です」と語る。

この政策の歴史を紐解くと、2010年の民主党政権下で成立した高校無償化法に行き着く。西田氏は「補助金と言うとバラマキ批判を浴びやすいから、最近は無償化と言い換えたがるわけですが、実質はほぼ同じ。誤認を誘うような呼び方はよろしくない」と批判した。

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公立高校の定員割れが加速

西田氏と安田氏は、この政策が公立高校の定員割れを加速させていると指摘する。兵庫、愛知、福岡などで始まった定員割れの連鎖は、地方の公立高校存続の危機を招いている。私立高校への授業料補助が手厚いため、保護者は私立を選ぶ傾向が強まり、公立高校の生徒数が減少。地元で質の高い教育を受けられなくなる事態が懸念される。

安田氏は「授業料補助に34万円の差がある。私立の優位が続けば、中学受験はますます過熱する」と警鐘を鳴らす。経済的な理由で進学先を選べない家庭を救うはずの政策が、かえって格差を広げているのだ。

理系も就職に悩む時代

両氏はさらに、教育の質と将来のキャリアについても議論を展開。理系人材であっても就職に悩む現代において、子どもに何を学ばせるべきかが問われている。西田氏は「単なる学歴ではなく、本当に必要なスキルを見極める必要がある」と述べた。

2025年2月の自民・公明・日本維新の会の3党合意により、少数与党だった自民・公明が維新に譲歩する形で高校無償化が決まった。この政治的な背景も、政策の歪みを生む一因となっている。

今後の課題と展望

西田氏は「完全無償化ではなく、真に必要な支援を検討すべきだ」と提言。安田氏も「格差是正を目的とするなら、所得に応じた段階的な補助が望ましい」と指摘する。両氏の議論は、教育政策の根本的な見直しを迫るものとなっている。

この記事は『プレジデント』2026年7月17日号に掲載されたもので、西田亮介氏(日本大学危機管理学部教授/東京科学大学特任教授)と安田洋祐氏(大阪大学経済学部教授)の対談形式で構成されている。

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