財政主導で描く成長『日本経済の分岐点』岩田規久男著<書評>評・田村秀男
財政主導で描く成長『日本経済の分岐点』岩田規久男著<書評>

『日本経済の分岐点』(岩田規久男著、夕日新書・1265円)は、「経済成長こそが国民の豊かさの源泉」とする信念に沿って高市早苗政権の経済政策を論じる。著者は、1990年代初めの平成バブル崩壊以来、一貫して経済に出回るお金の量を大幅に増やすリフレ政策を提唱してきた。2013年3月から5年間、日本銀行副総裁として第2次安倍晋三政権が打ち出したアベノミクスの主柱である異次元の金融緩和政策を担った。

アベノミクスの成果と消費税増税への無念

アベノミクスは「就職氷河期世代」に代表される雇用難を一挙に解消し、物価が際限なく下がり続けるという意味でのデフレを終わらせたと自負する。他方で、2度にわたる消費税の大型増税が「量的・質的金融緩和効果を台無しにした」との無念を隠さない。正規、非正規を合わせた働き手1人当たり平均の実質賃金は上がらず、経済成長率は低水準のままだ。

30年間もの長期停滞局面から完全に脱却するためには、日本経済の潜在的な成長力を押し上げるしかないが、金融政策ではできないと断じる。高市政権の「責任ある積極財政」に託された使命であり、若者の高い支持率が支える。

エコノミストやメディアへの反論

ところが、エコノミストやメディアの多くは経済成長追求に無関心で、主に市場の皮相を追う。高市路線は財政危機を招き、長期金利上昇、円安・物価高を招くと非難し、日銀には利上げを求める。反論は綿密なデータ分析に基づく。

海外に滞留する千数百兆円もの金融資産を動かす海外の投資家がメディアの財政危機警告に乗じて日本国債と円売りを誘う。物価の大幅な上昇は、エネルギー関連や食料品と品目が限られると判断し、円安元凶説を一蹴する。政府のガソリン補助や食料品消費税減税は妥当で、日銀利上げや緊縮財政は消費需要を損なう。

財政健全性の鍵と課題

財政の健全性の鍵は名目国内総生産(GDP)拡大に伴う税収増と債務の対GDP比低下傾向の定着だ。課題はある。危機管理・成長投資は促進すべきだが、政府補助偏重では失敗のリスクがつきまとう。撤退する勇気を持て、と忠告している。