首に振り回される明智光秀描く 住田祐さん『誰が首』で歴史小説に挑戦
首に振り回される明智光秀 住田祐さん『誰が首』で歴史小説に挑戦

松本清張賞受賞作家の住田祐さんが、戦国武将・明智光秀を主人公にした歴史小説『誰が首』(文芸春秋・1980円)を刊行した。デビュー作『白鷺立つ』から1年。満を持して歴史小説の世界に名乗りを上げた一冊だ。

「首のすげ替え」を巡る緊迫の物語

物語の舞台は、織田信長が越前の朝倉氏と北近江の浅井氏を滅ぼした天正元年。信長の命で、朝倉義景と浅井久政・長政親子の首は京の六条河原の獄門台にさらされていたが、何者かに持ち去られる。治安維持を担う光秀は露見を恐れて首のすげ替えを即断するが、これが後に大きな禍根を残すことに。

信長は義弟・長政の裏切りを根に持ち続け、しゃれこうべに金箔を貼り付けて「薄濃(はくだみ)」にするよう光秀に命じる。出世を妬む他の重臣たちの目もあり、光秀の気苦労は絶えない。

「困っている人を書くのが好き」

住田さんは「性格が悪いのかもしれませんが、困っている人を書くのがなぜか好きで。誰が首を奪われる失態をして、誰にばれたら緊迫感が増すのか。そこから織田信長と家臣の光秀という2人が出てきた」と語る。

今作での光秀はとことん「首」に振り回される。ライバルの羽柴秀吉とともに信長を狙撃した僧の首を鋸引きにしたり、信長に歯向かった武将の首を的にして毬遊びをしたりする。すべて信長の命だ。最後は本能寺の変の結末に至るまで、首を巡るエンタメ小説に徹しながら信長・光秀・秀吉の関係性を描き切った。

専業作家としての覚悟

住田さんはデビュー当時は会社員だったが、半年ほど前に専業作家に転身。歴史作家の安部龍太郎さんから「『白鷺立つ』と同じレベルのものを意識して書くには5年はかかる」と言われた言葉の重みを、今まさにかみしめているという。

「あまり力み過ぎてもいけないが、意図してホームランを打てるようになりたい」と語り、書く覚悟を固めた名乗り口上代わりの一冊となっている。