2022年の銃撃事件で亡くなる少し前、元首相の安倍晋三はこう語ったと、当時、政府の中枢にいた人物は振り返る。「あれは、僕だからできたんだよ」。
「あれ」とは、安倍が首相として創設を主導した新しい在留資格「特定技能」を指す。政府が人手不足と認める分野での外国人の就労を可能とするもので、条件を満たせば家族を伴う滞在や永住申請も可能となる。
受け入れ開始から約6年、約39万人に拡大
19年4月に農業や外食業などの産業を対象に受け入れが始まり、この資格による外国人は25年末時点で計約39万人だ。在留外国人約410万人の1割程度を占める。
安倍が制度の検討を始めるきっかけは、経済界から寄せられた深刻な人手不足への危機感だ。東京五輪(21年開催)なども控え、人手不足の加速化が懸念されていた。
排外風潮の中で厳格化・規制強化の対象に
安倍政権は外国人労働者の受け入れ拡大にも取り組みました。しかし今、外国人に対する排外的な風潮の中で、そうした取り組みが厳格化や規制強化の対象になっています。この間、どんな変化があったのか。永田町や霞が関の動きから探ります。
安倍氏は「移民政策でない」と強調していた。18年2月の成長戦略を巡る議論では、官僚の反対「不良外国人来る」を一蹴したとされる。しかし、制度の運用が進むにつれて、規制緩和の度合いを巡って「緩めすぎ」との指摘も出ている。
受け入れ停止の検討も、外食産業に波紋
政府は外国人受け入れ制限の可否について、年度内に基本方針をまとめる検討を本格化させている。特定技能人材の受け入れ停止は「死活問題」として、外食団体のトップが危機感を表明する事態となっている。
出国税の増税分を巡っては、クマ対策やサクラ害虫防除などに充てられ、実質的に外国人が負担しているとの批判がある。外国人材の受け入れ枠が「少なすぎる」として、業界からは不満の声も上がっている。



