国立西洋美術館、世界遺産登録10年 田中館長「歴史的価値伝える」
国立西洋美術館、世界遺産10年 田中館長「歴史的価値伝える」

台東区の国立西洋美術館が、20世紀を代表するフランスの建築家ル・コルビュジエ(1887~1965年)の作品として世界文化遺産に登録されてから10年を迎えた。田中正之館長(63)に登録後の変化や今後の展望を聞いた。

登録10年の変化と建築の意義

――登録から10年となった。

当館の知名度が国内外で上がり、多くの方々が足を運んでくれた。ただ、今でも「何がすごいのか」とよく聞かれる。一言で言えば、今日の建築に多大な影響を与えたル・コルビュジエの作品だからだ。

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ル・コルビュジエは、近代以前の建物に施されていた装飾を排し、合理性と機能性を重視した。建築のあり方をがらりと変えた人物で、登録時の副題にも「近代建築運動への顕著な貢献」と記されている。

ル・コルビュジエの建築手法と美術館の魅力

――ル・コルビュジエの建築方法とは、どのようなものか。

ル・コルビュジエは建物を壁ではなく、柱で支えるデザインを提唱した。建物を宙に浮いているかのように軽く見せ、柱が立つ階に、自由で広い空間を生み出した。さらに、窓を水平に並べる方法も取り入れ、今の建築に通じる礎を築いた。例えば、東京駅周辺には多くの高層ビルがあるが、いずれも支柱が立ち、窓で覆われている構造が見て取れるだろう。

彼は天井の高さや柱の間隔などを人体に合わせて決めれば、居心地が良く、調和が取れた建物が出来ると考えた。「モデュロール」という統一的な尺度を考案し、当館もこうした様々な手法によって建てられている。

――西洋美術館はどんなところが魅力か。

ル・コルビュジエは、「建物は散策しながら楽しむもの」と考えていた。当館も足元を気にせず、様々な角度から作品を鑑賞できるように、スロープを重視した設計になっている。

彼は所蔵品が増えるにつれて、外側に向かって増築できる「無限成長美術館」という構想も持っていた。当館はこのアイデアを具現化した建物で、本館の展示室がらせん状に広がっている点も特徴だ。

2022年には、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の要望も踏まえ、草木が植えられていた前庭を、開館当初のように開放的な形にした。以前よりも本来の設計を感じられるはずだ。

今後の展望と来館促進策

――今後、どのような美術館を目指すか。

登録後、建物自体が「一つの作品である」という意識がより強くなった。大切に維持し、歴史的な価値を広く伝えていきたい。

当館では、モネの西洋画やロダンの彫刻なども展示しているが、美術品は人生をより豊かに、楽しいものにしてくれるものだ。今後、いかに美術館の敷居を下げられるかが重要だと考えている。

多くの人に足を運んでもらうため、23年度からは毎月第2日曜日に常設展を無料にした。小さな子供も連れてきやすいように、大きな声を出しても構わない日も設けている。今後も様々な工夫を重ねていきたい。

作品を理解しなくてはいけないとか、難しいことを考える必要はない。建物で涼むついでに、作品を眺めるくらいの軽い気持ちで来てほしい。

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