AIモデルと外部のデータやツールを接続するオープン標準「Model Context Protocol」(MCP)のコアメンテナは2026年8月22日(現地時間)、更新版のロードマップを公開した。次期仕様リリース以降の開発方針を示すもので、コアメンテナがコミュニティーのメンテナやワーキンググループと共同で策定した。
MCPは2026年3月に、トランスポートの進化とスケーラビリティ、エージェント間通信、ガバナンスの成熟、エンタープライズ対応という4領域を掲げたロードマップを公開していた。その成果の多くは2026年7月28日公開の仕様に反映されている。プロトコルレベルのセッションと初期化のやりとりを廃止し、サーバが状態を保持せずに水平方向へ拡張できるようにしたのが最大の変更点だ。認可の面でも、発行者の検証やクライアント登録手順の見直しが加わった。
MCPが次に狙う5領域とは
新ロードマップが示した優先領域は、エージェント向け通信の基本要素、トランスポートの統一、エージェントIDの標準化、ツール呼び出しの結果と規模の改善、SDKの開発者体験の向上という5つだ。各領域にはコアメンテナと1つ以上のワーキンググループが割り当てられている。
エージェント向け通信の基本要素では、1つの要求に1つの応答を返す従来の型では、長く回り続けるエージェントの処理に対応しきれないとし、サーバ起点のイベント(Webhookやチャンネル)を扱えるようにし、クライアントが結果を問い合わせ続けずに済む形を目指す。非同期待ちの仕組みである「Tasks」拡張を成熟させ、仕様本体へ取り込む作業も含む。
IDと認可の設計が焦点に
エージェントIDとエンタープライズ向けセキュリティでは、現状のMCPの認可は、人がブラウザで承認する前提で組まれているが、呼び出し元は独自のIDを持つクラウドワークロードとして動くエージェントや、その場にいない利用者の代わりに動くエージェント、限定的な権限を渡されたサブエージェントへと広がっている。APIキーの貼り付けや長期間有効なトークンに頼らず、既存の標準の上でエージェントのIDを識別して信頼できる仕組みを整える。
この領域では、通信相手が正規の保持者であることを示す「Demonstrating Proof of Possession」(DPoP、RFC 9449)の仕様確定と普及を進める。合わせて、ワークロードにIDを付与する「Workload Identity Federation」、企業のIDプロバイダー側でMCPサーバへのアクセスを一括管理する拡張「Enterprise-Managed Authorization」の基盤となるID-JAGグラント、標準的なトークン交換を組み合わせ、エージェントのIDと権限委譲の道筋を定める。IETFのOAuthワーキンググループやWIMSEワーキンググループとの連携も続ける。
基本要素の改善では、サーバがまず小さな入り口だけを提示し、会話の焦点が絞られるにつれてツールの一覧を段階的に開示する「progressive discovery」の検討を始める。SDKについては、開発者がAIエージェントにライブラリを示してMCPクライアントやサーバを作らせる例が増えている点を挙げ、APIの明快さとドキュメントの正確さが動くコードになるかを左右すると説明している。
SEP採択は優先領域から
MCPの仕様変更は「Specification Enhancement Proposal」(SEP)と呼ぶ提案を通じて進む。今回示した5領域に該当するSEPは採択が優先され、採択される可能性も高くなる。領域外の提案が自動的に却下されるわけではないものの、メンテナのレビュー時間は限られており、優先領域へ先に配分される。
MCPサーバを社内に立てる企業や、MCP対応の製品を選ぶ立場から見ると、今回のロードマップは「どの機能がいつ標準になるか」を読む材料になる。特にエージェントIDと認可の設計は、既存のIDプロバイダーやOAuth基盤との接続方針に直結する。仕様の確定を待つか、拡張として先行導入するかの判断が求められる。



