政府は災害用井戸の普及を目的に、国のデータベースに記録されている全国約8万件の深井戸の位置情報を自治体に開示する方針を固めた。7月に都道府県に通知し、直後の熊本地震で初めて開示が行われた。
開示の対象となるデータベース
開示されるのは、国土交通省の「全国地下水資料台帳」である。この台帳には、1952年度以降に掘削された深さ30メートル以上の深井戸約8万件について、揚水量や水温、塩素の含有量などが詳細に記録されている。現時点で既に存在しない井戸も含まれるが、深井戸は一般に浅井戸より水質が安定しており、災害時の代替水源として注目されている。
個人情報保護法の例外適用
深井戸の所有者は学校や行政機関のほか、民間企業や個人も含まれる。これまで個人情報保護の観点から正確な位置情報は公開されておらず、地元自治体が井戸の所在を十分に把握できない状態だった。政府は個人情報保護法の例外規定を根拠に、法律上の問題はないと判断。7月8日付で全国の都道府県に開示方針を通知した。
熊本地震での初開示
通知直後の7月28日に発生した熊本地震で大規模な断水が起きると、地元から国に要請があり、7月30日に熊本県菊陽町内の深井戸35件の位置情報が初めて開示された。翌31日には県内全域の深井戸計1566件の情報が県に共有された。
今後の展開と目標
政府は今後、全国的な開示に向け、希望する市区町村を都道府県ごとに取りまとめて申請してもらい、国が一括して回答する方針。開示が進めば、市区町村の担当者が所有者に直接災害用井戸への登録を働きかけることが可能になる。国の国土強靱化実施中期計画では、2030年度までに全市区町村で代替水源を確保する目標を掲げ、災害用井戸をその柱と位置づけているが、実際に登録済みの自治体は2024年調査時点で27%にとどまっている。



