災害時に自治体と国をつなぐ「ふるさと防災職員」の活動が本格化している。創設2年目で人員は1.8倍の46人に拡大し、47都道府県に1人ずつの体制がほぼ整った。2026年11月に予定される防災庁発足に向け、自治体と「顔の見える関係」を築き、非常時に備えている。
東日本大震災の経験を糧に
岩手県担当の赤坂岳史さん(47)は、2011年の東日本大震災で被災した経験を持つ。当時、釜石市で家業の書店を手伝っていた際に激しい揺れに見舞われ、父と伯父は津波で亡くなった。「自分が止めていれば」と後悔する中、防災意識を高める仕事を志し、2025年7月に行政書士から転身した。普段は内閣府で勤務し、月1回程度、岩手県庁を訪れて国の支援制度を説明。2025年10月には台風被害の八丈島に派遣され、避難所の住民から「温かいものが食べたい」という要望を受け、炊き出し情報の発信を町に助言した。避難所には炊き出し予定が貼り出されるようになり、「住民に寄り添いながら対応できた」と手応えを感じている。
多様な人材が連携強化
ふるさと防災職員は、防災庁の人員確保の一環で新設された。7年以上の職業経験などを条件に内閣府が公募し、2025年度は25人、2026年度は21人を確保。計46人がそれぞれ都道府県を担当し、秋田・宮城両県は1人が兼任する。平常時は避難計画の進捗や備蓄状況をヒアリングし、災害時にはリエゾンとして現地に入る。これまでに青森県の大雪や山梨県東部・富士五湖を震源とする地震などで計6回派遣された。大規模災害時は従来も国の職員を派遣していたが、普段から自治体職員と顔なじみになることで、スムーズな意思疎通が期待できるという。
熊本県担当の元陸上自衛官・石井一将さん(62)は、2025年8月の豪雨被害で避難所の物資が災害救助法の対象になるかなどの相談を受け、内閣府の担当者を紹介。県健康福祉政策課の尾方良太郎参事(36)は「石井さんに頼めば、すぐに国につないでもらえた」と感謝する。管理栄養士の資格を持つ長崎県担当の浜田真里さん(45)は、2016年の熊本地震で被災者の食事指導を経験。長崎県には備蓄食料にみそ汁などを加え、栄養バランスを考慮するよう提案した。「防災庁設置に向け、長崎県と連携しながら食の知見を生かしたい」と話す。他にも研究者や助産師、被災地カメラマンらがおり、今後は民間団体との人脈作りにも努めるという。
防災庁発足に向けた布石
内閣府の担当者は「担当自治体との関係をしっかり築きつつ、それぞれの能力を存分に発揮してもらいたい」と述べている。ふるさと防災職員は任期付き国家公務員で、内閣府に所属。任期は3年で最長5年まで延長可能。防災庁の職員定数352人のうち、同庁発足時には1割以上を占める見通しだ。



