再検討が進められていた北陸新幹線の敦賀(福井)―新大阪の延伸ルートについて、与党プロジェクトチーム(PT)の整備委員会は15日、福井県小浜市や京都市を通る「小浜・京都ルート」のうち、JR京都駅から約5キロ離れたJR桂川駅付近の地下に新駅をつくる「桂川案」とする方向で合意した。京都市の地下には「琵琶湖に匹敵する水がめ」があるとされ、地下水などへの影響を心配する声がある。
地下水への懸念と老舗店主の訴え
京都市内では12日夜、延伸計画の撤回を求める市民団体の集会があった。京都の老舗の店主らが地下水の重要性などを訴えるショートムービーが上映され、トークセッションも行われた。店主らは朝日新聞の取材に対し、延伸計画への懸念を語った。
京都市の中心部、四条通に面した老舗和菓子屋「亀屋良長」(下京区)。創業220年を超え、初代が「良い水が出る」とこの地に店を構えたとされる。8代目当主の吉村良和さん(52)は「和菓子と水は切っても切れない結びつきがある」と話す。餅を練る、小豆を炊く、まんじゅうを蒸す……ほとんどすべての工程に、井戸からくみ上げた地下水を使っている。
60年ほど前、四条通の地下に地下鉄工事が行われた際、地下水脈が変化し、周辺の井戸の水位が低下した経験があるという。吉村さんは「今回の新幹線工事で再び地下水が影響を受けるのではないか」と懸念する。
「桂川案」の概要と課題
「桂川案」は、JR桂川駅付近の地下に新駅を設置し、そこから新大阪方面へ延伸する計画。小浜・京都ルートのうち、京都駅を通る既存案に比べて工事費が抑えられるなどのメリットがあるとされる。しかし、桂川駅周辺は住宅地であり、騒音や振動の影響も懸念されている。
与党PTの整備委員会は、2026年7月15日の会合で「桂川案」を正式に了承した。今後、国土交通省が環境影響評価などを進め、具体的なルートや工法が決定される見通し。
市民団体の反応
集会を主催した市民団体「京都の地下水を守る会」の代表は「地下水への影響が十分に検討されていないまま、拙速に合意が進められた」と批判。今後も計画撤回を求めて活動を続ける方針を示した。
京都の地下水は、京料理や酒造り、和菓子など伝統産業に欠かせない資源。市の調査では、地下約100メートルに広がる帯水層の水量は琵琶湖に匹敵するとされる。新幹線トンネル工事でこの帯水層が損傷すれば、地下水の枯渇や水質悪化を招く恐れがある。
今後の見通し
与党PTは、2026年度中にルートを確定させ、早期の着工を目指す。一方、京都市の松井孝治市長は「環境影響評価を徹底し、市民の理解を得る必要がある」と述べ、慎重な姿勢を示している。延伸計画をめぐっては、小浜市や京都府など沿線自治体の間でも温度差があり、今後の調整が焦点となる。



