オーストリア北部ブラウナウで22日、ナチス・ドイツ総統アドルフ・ヒトラーの生家の改修工事が完了し、警察署に生まれ変わった。警察署にすることで現代の極右過激派による「聖地」巡礼を阻止する狙いがある。
ヨハネス・ビルトバッハー町長は開所式で、この改修によって地元のコミュニティーが「自らの歴史と向き合い、責任を果たしていること」を示したいと語った。警察署への改修は、ホロコーストにおける自国の役割について十分な責任を果たしていないと批判されることが多いオーストリアにおいて、長期的かつセンシティブな議論を経て決断されたものだ。
歴史家の主張と専門家委員会の決定
歴史家にとって、ヒトラー生家の解体は論外だった。彼らはオーストリアに対し、600万人以上のユダヤ人やロマ人、LGBTQの人々、共産主義者を殺害したナチスの罪に対する自国の役割に向き合うよう強く求めた。専門家委員会は生家を警察署とすることを決定し、オーストリア政府はそれによりナチズムの追悼がいかなる形でも認められないことを「明確に示し」、同地を「中立化」できると主張した。
賛否両論の声
だが、ナチス・ドイツ強制収容所の生存者らによって結成された団体「オーストリア・マウトハウゼン委員会」の広報を務めるロベルト・アイター氏はAFPに対し、「それは荒唐無稽だ。歴史上最悪の大量殺戮者が生まれた場所を人類が忘れることはない」「この改修で、ネオナチによるブラウナウへの聖地巡礼を阻止することはできないだろう」と語った。
決定当時内相を務めていたウォルフガング・ペショルン氏は22日、「法治主義の守りを担う警察署」をこの建物に配置することは「民主主義の最も明確な兆候だ」と述べた。また、オーバーエスターライヒ州警察のトップであるアンドレアス・ピルセル氏は、「ここに勤務する警察官らは、自らが働いている場所とその文脈を非常に強く認識している」と信じていると語った。
だが、ブラウナウ現代史協会のフロリアン・コタンコ氏は、改修によって議論が終わるとは思えないと疑念を示した。「ブラウナウはこれからもずっと、世界中でアドルフ・ヒトラーが生まれた町と関連付けられるだろう。これで話が終わるわけではない」と語った。



