トランプ米政権が、国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)本体を制裁対象に指定した。米企業にICCとの取引を禁ずるのが柱で、180日間の猶予期間を経て来年4月に発動する。ICCが国際金融システムから事実上締め出され、活動が困難になる恐れがある。
「ならず者の裁判所」と米国務長官
ルビオ米国務長官はICCを「ならず者の裁判所」と呼び、運営能力を失わせるとした。米国はこれまでも、赤根智子所長はじめICCの裁判官ら13人を制裁対象とし、トランプ大統領は加盟国にICC脱退を呼び掛けていた。
ICCの目的と日本の役割
ICCの目的は人道犯罪を許さず、国際法に基づき裁くことだ。その機能不全は「『法の支配』による国際秩序」が危機にさらされるに等しい。米国はICCに不満があっても話し合いで解決してもらいたい。
最大の分担金拠出国の日本は、欧州の加盟国などと連携し、米国に制裁撤回を働き掛ける必要がある。高市早苗首相が14日の衆院予算委員会で「米国に言うべきことはしっかり伝えながら働き掛けを続ける。ICCを一貫して支持しており、今後も支持する」と述べたのは妥当だ。
加盟国と非加盟国の構図
ICCの所在国オランダを含む欧州連合(EU)は域内で米制裁を無効化する「ブロッキング規則」を検討すべき課題としている。125の国・地域が加盟するICCに米国やイスラエル、中国、ロシア、北朝鮮、イランなどは加盟していない。
米国は、加盟国アフガニスタンで戦った米兵を捜査対象にした点を自国への主権侵害と反発している。イスラエルのネタニヤフ首相への逮捕状発付も批判している。
補完性の原則と今後の課題
整った刑法や軍法を持つ民主主義国のリーダーや将兵の訴追には慎重さが必要だろう。当該国が放置する場合にICCが「補完性の原則」で対応するのが筋だからだ。
茂木敏充外相は「ICCが抱える課題にICCや締約国が対処し、適正な運営がなされることが重要だ」と述べ、ルビオ氏と協議を続けるとした。進展を期待したい。
プーチン露大統領への逮捕状発付をめぐり、ロシア政府は赤根氏らの身柄引き渡しを要求した。オランダが応じるわけもないが、ICCの動揺につけ込む卑劣な振る舞いは度し難い。