名古屋市が10月から施設利用料を大幅値上げ 752施設が対象に
名古屋市は2024年10月1日から、市内752施設の利用料金を一斉に引き上げる方針を固めた。対象となるのは文化小劇場や市民ギャラリー、プール、図書館駐車場など市民に身近な施設が多数含まれており、値上げ幅は10%から50%に及ぶ。市は物価高騰や人件費上昇を背景に、約20年ぶりとなる大規模な料金改定を実施する。
文化施設からスポーツ施設まで幅広く影響
市議会2月定例会に提出された条例改正案によると、具体的な値上げ例として、中村文化小劇場のホール使用料(土日1日)が8万2千円から11万4千円に、市民ギャラリー栄が1万800円から1万4500円になる。スポーツ施設では鶴舞公園テニスコート(半日)が1400円から2100円に、市内4館の屋内プールは大人・子どもともに100円値上げされる。
さらに市立中学校の体育館や運動場112カ所も対象となり、クラブ活動などに利用する団体にも影響が及ぶ。各施設は「行政の関与の必要性」と「収益性」に基づき、公費と利用者負担の割合が設定されており、市は4年ごとに料金見直しを検討してきたが、消費税増税や新型コロナウイルスの影響でこれまで見送られてきた経緯がある。
広沢市長「受益者負担の適正化が必要」
広沢一郎名古屋市長は「ここ数十年はデフレ傾向もあり改定を見送ってきたが、近年の物価高や人件費上昇を踏まえ、財政状況が極めて厳しい中で受益者負担の割合に応じた適切な利用料に見直した」と説明。値上げを実施しない場合、施設を利用しない市民にも税金という形で負担がかかるとし、受益者負担の原則の妥当性を強調している。
今回の料金改定により、2026年度の使用料収入は12億6千万円増加し、翌年度以降は年間約34億円の増収が見込まれている。ただし、図書館やスポーツセンターなどの駐車場料金については「近隣の民間駐車場の料金に合わせる」として、50%を超える値上げも予定されている。
急激な値上げに市民から困惑の声
特に注目されるのは中区の男女平等参画推進センター・女性会館(イーブルなごや)の駐車場で、1回料金が現行の300円から1000円へと3倍以上に跳ね上がる。同施設でギャンブル依存症の自助グループに参加する20代男性は「経済的に余裕のない参加者が多く、急激な値上げは本当に厳しい」と困惑を隠さない。
文化関係者からは強い懸念
文化小劇場や芸術創造センターなどの値上げに対しては、市内の劇団関係者から強い懸念の声が上がっている。青少年文化センター(中区)の場合、土日のホール使用料が1日16万円から22万7千円に値上がりし、3日間の公演では約20万円の負担増となる。
名古屋劇団協議会の島崎宏行事務局長によれば、これまで3500円だった入場料が値上げ分を反映すると5000円になると試算され、「公演をつくる側も見る側も、劇場が縁遠い存在になってしまう」と危機感を強めている。自前の練習場を持たない劇団は各区の生涯学習センターなどを利用しており、そうした施設の使用料も引き上げられるため、負担はさらに重くなる。
劇団演集の土屋隆司代表は「文化活動をしやすい環境づくりは自治体の重要な役割のはずだ」と疑問を呈し、愛知文化団体連絡会議の石川久事務局長も「文化活動は市民の心や生活を豊かにするもの。市には値上げについて再考してほしい」と訴えている。
今回の大規模な値上げは、名古屋市の財政再建と受益者負担の見直しという観点から実施されるが、市民の文化活動や日常生活への影響は小さくない。10月の実施に向けて、市と市民の間での議論がさらに深まることが期待される。
