NHK井上会長インタビュー:スポーツ・エンタメは公共放送の使命、配信強化へ
NHK井上会長:スポーツ・エンタメは公共放送の使命

井上会長が語るNHKの未来像

NHK(日本放送協会)の新会長に今年1月就任した井上樹彦氏が、東洋経済のインタビューに応じ、公共放送の役割や今後の戦略について語った。政治部記者出身で副会長から内部昇格した井上会長は、橋本元一氏以来18年ぶりの生え抜きトップ。設立101年目を迎え、受信料収入の減少、ネット配信の強化、グローバル展開など多くの課題に直面するNHKの舵取りを聞いた。

スポーツ・エンタメは公共放送の重要な役割

井上会長は、今年のサッカーワールドカップ北中米大会で日本代表全試合を地上波とBSで生中継し、全104試合を放送した理由について、NHKは1978年アルゼンチン大会からW杯を放送してきた歴史を挙げた。CMがないため、ハーフタイムの選手の表情や試合後のインタビューまで届けられる点を強調。1次リーグ第3戦のスウェーデン戦では、ネット配信「NHK ONE」で782万回再生(7月2日時点)を記録し、25年大みそかの紅白歌合戦の749万回を上回った。スマホ向けにハイライトを2分に短縮するなど、配信を意識した制作を行っている。

「サッカーという世界最高峰のスポーツを伝えたいというのは一貫した思い」と述べ、日本サッカー協会の宮本恒靖会長との対談でも、テレビの役割が日本サッカー強化に貢献したことで一致したと明かした。宮本会長自身が少年時代にマラドーナのゴールを見てサッカーの魅力を知り、それが02年日韓大会につながったように、今の小学生がスマホで繰り返し視聴し、10年後、20年後の選手になる可能性を指摘。「報道だけに集中すべきという意見もあるが、多くの人に感動を届けるスポーツやエンタメは公共放送の重要な役割」と語った。

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放送権料高騰と公共放送の使命

スポーツ放送権料の高騰について、3月のWBCではNetflixが放送権を取得し、地上波で見られない不満が出た事例を挙げ、「スポーツビジネスは放送権料の高騰に逆らえず赤字になる場合もある」と認識。その上で、「スポーツ中継を国民に満遍なく楽しんでもらうのもNHKの大きな役割で、公共的使命」と強調した。高校野球では春のセンバツを初めてネット配信し、視聴率の高い夏の甲子園とともに重要なコンテンツと位置付ける。ただし、「受信料で運営されるNHKとしては金に糸目をつけられず、1つの強力なコンテンツのために他に支障が出てはいけない」とコスト管理の必要性も述べた。

コンテンツの質・量は落とさない

25年度決算について、単体事業収入は6130億円で前期比微増、事業収支差金は318億円の不足で3年連続の赤字となった。27年度の収支均衡達成について問われると、井上会長は「コンテンツの質・量は落とさない」と明言。受信料収入減少に対応しつつ、業務効率化とインターネット配信の強化を進め、NHKオンデマンドのアーカイブ充実やAIアナの状況に応じた使い分けなど、新たな取り組みを推進する方針を示した。

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