火星衛星探査「MMX」打ち上げ成功、世界初の快挙へ挑む
火星衛星探査「MMX」打ち上げ成功、世界初の快挙へ

火星の衛星の探査機「MMX」がH3ロケットで打ち上げられ、往復5年の長旅に出発した。火星を周回する衛星フォボスの砂を採取し、地球に持ち帰る世界初の試みだ。日本の宇宙探査の新時代を切り開く画期的なプロジェクトである。日本の実力を世界に示す好機となろう。ぜひとも成功させてほしい。

フォボスの起源解明へ、世界初のサンプルリターン

探査の主目的は「火星の月」であるフォボスの起源を解明することだ。火星の重力に引き寄せられた小惑星が周回するようになったという「捕獲説」と、火星に天体が衝突し、飛び散った破片が集まり誕生したとする「巨大衝突説」がこれまで議論されてきた。太陽系の成り立ちや進化を解明する惑星科学で未解決となっている重要な問題だ。採取した砂を詳しく分析することで、長年の論争の決着を目指す。

現在の火星は砂漠のように乾燥しているが、かつては水が豊富にあり、生命が生存可能な環境だったと考えられる。火星の水は小惑星が運んだ可能性が高いとされており、こうした環境の成り立ちを知る手掛かりも得られるだろう。フォボスの砂には、隕石の衝突で舞い上がった火星の砂がわずかに含まれると予想されている。採取できれば、生命の痕跡が見つかるかもしれない。

日本の探査技術を結集した国際プロジェクト

人類はこれまで米国がアポロ計画で月の石を、日本の探査機「はやぶさ」などが小惑星の砂をそれぞれ採取した。火星やその衛星の物質を持ち帰れば、初の快挙となる。日本の強みである歴代はやぶさの実績をさらに発展させ、火星の謎に挑む戦略性を高く評価したい。月着陸実証機「スリム」の成果も継承して着陸に臨む。日本の探査技術とノウハウを結集した挑戦になる。

今回は欧米も機器の開発などで協力しており、日本が主導する最大規模の国際的な探査計画だ。科学的な成果だけでなく、将来の火星有人探査に役立つ知見の獲得も目指している。

世界競争の中で、日本の先行に期待

火星では米国が生命の証拠を探すため試料を採取したが、地球に持ち帰る計画が撤回された。一方、中国も火星からの試料採取を目指しており、日本と同じ令和13年に地球に持ち帰る計画だ。採取から帰還までの歩みを着実に進め、日本が先行して成果を挙げたい。