神奈川大学附属中・高等学校(横浜市)は2027年度、英語を単なる教科ではなく「未来を切り拓く力」として位置づけ、グローバル教育改革を本格始動させる。中学入試に英語外部試験評価制度「J_DES」を導入し、入学者の幅を広げるほか、中学1年から高校1年までの英会話授業でCLIL(内容言語統合型学習)を実践し、「世界で生きる力」の育成を目指す。
建学の精神を現代に再解釈
同校の岩佐賢史教頭は、改革の背景について「本校の建学の精神は『質実剛健・積極進取・中正堅実』。一見古めかしいが、『質実剛健』は自らを律して実行する力、『積極進取』はチャレンジ精神、『中正堅実』はバランスの取れた思考や行動と、現代に必要なコンピテンシーとして再解釈した」と説明する。改革の目標は「世界で生きる力」の育成で、「多くの学校ではグローバル教育として英会話や海外研修に力を入れるが、自己目的化してはいけない。目指すのは、自分と異なる背景を持つ人々と協働し、受け入れ、受け入れられる素養を身につけることだ」と語る。
中学入試改革:J_DES導入で門戸拡大
改革の柱の一つが中学入試改革だ。2027年2月1日の第1回入試で、従来の国語・算数に加え、英語外部試験評価制度「J_DES」を導入する。受験時点で取得している実用英語技能検定やTOEFL、IELTSなどの資格・スコアを点数換算し、「準2級プラス」相当は70点、「準2級」相当は60点などと評価。国語と比較して高い方を合否判定に用いる。英語科の横内敦教諭は「小学校に英語授業が導入されて6年、英検などを受ける小学生が増えている。そうした努力を評価したい。中学入試に英検などを活用する学校は全国で140校を超え、ニーズが高まっている」と狙いを語る。
同時に、12月実施の帰国生入試でも、独自作成の英語問題を廃止し、J_DESに切り替える。「調査で、本校作成問題と外部試験の成績に相関性があることが分かった。受験生の負担軽減につながる」と横内教諭は説明する。入学後は、帰国生やJ_DES利用受験者に対し、中1・中2の週5時間の英語授業のうち、スピーキングとライティングの2時間分を「取り出し授業」とし、習熟度別指導を強化する。
CLILで「考え、伝え、導く力」を育成
もう一つの柱がCLILの導入だ。中1から高1までの全生徒を対象に、週1時間の英会話授業で実施する。横内教諭は「重視したいのは『何を学ぶか』。自他の理解や社会とのつながりといった総合学習的なプログラムで、発達段階に応じた発信力を育てる」と語る。
中1のテーマは「最高の自己紹介」。名前や年齢、好きな色といった表面的なことにとどまらず、「なぜこの色が好きか」という自己探究を通じて、他者と異なる自分のあり方を理解・言語化し、自己アピールに結びつける。中2では「自分と世界のつながり」をテーマに世界の文化に触れる。CLILを担当する4人のALT(外国語指導助手)はイギリス、カナダ、ニュージーランド、フィリピン出身で、生徒は対話を通じて価値観や文化の違い、日本との共通点を体感する。中3のテーマは「思考から行動を起こす」。ALTと日本人教員がサポートし、社会課題や国際問題を題材に学習。高1では日本人英語科教員が「自分らしいリーダーシップ」を探究する。「先頭に立つ人だけがリーダーではない。自分の特性を生かしてチームにどう貢献できるかを見いだす時間にしたい」と横内教諭。
岩佐教頭は「生徒の心にスイッチを入れたい」と述べ、「社会科の授業でも、世の中の理不尽さに正義感を燃やす生徒がいる。その気持ちを行動に変える実践的なツールとして、英語による思考力や表現力を身につけてほしい」と期待する。
既存プログラムとの相乗効果
同校は以前から英語力強化や国際理解のプログラムを充実させている。中学各学年で3日間行う「Breakthrough English Camp(BEC)」では、10人程度のグループに1人ずつ外国人講師が付き、アクティビティやワークショップで英語力を高める。海外研修も、中1・中2向けのニュージーランド・ホームステイ、中3から高2向けのフィリピン・セブ島での英語トレーニング、イギリスでの文化交流、マレーシアでの社会課題探究などテーマ別に多彩だ。
横内教諭は「CLILで『外向き』のマインドが育てば、これらのプログラムの成果もさらに上がる。特に海外での社会課題探究に挑戦する生徒が増えると頼もしい」と期待する。海外進学支援も充実しており、海外9か国の大学に共通願書で出願できる「海外協定大学推薦制度(UPAA)」や、オーストラリア・マレーシアの大学への推薦制度を導入。TOEFL・IELTS対策講座も行う。今年度からは、高校在籍中に米国の高校卒業資格を取得できる「US Dual Diploma Program(DDP)」も開始した。
岩佐教頭は「海外大合格者を増やすのが目標ではない。今は、海外に行く前に日本に海外が『来ている』時代。どこに身を置いても、異なるバックグラウンドの人々と共存し、協働する力が必要。『コンフォートゾーン』から踏み出し、刺激し合う姿が見たい」と強調する。「従来から、学校の枠をはみ出てITを探究したり、製品開発に挑戦したりする生徒はいた。そうしたチャレンジャーがもっとわんさか出る、アグレッシブなやる気が育つ土壌作りを目指している」と語る。
横内教諭も「何にでもチャレンジできる環境は整えた。自分を超えようとする生徒の挑戦を全力でサポートする。新しい世界を一緒に見に行きましょう」と締めくくった。



