香川県内の高校から進学する人の8割超が県外へ流出していることを受け、県は県立大学の新設・拡充を検討している。工学系学部が有力候補とされる一方、県議からは「結論ありき」との指摘も出ている。
県外進学率は全国ワースト10位
文部科学省の学校基本調査によると、近年、県内高校から進学する人の8割超が県外に出ており、都道府県内の大学への進学率は全国でワースト10位に入る。県幹部らはこの事態を深刻に受け止め、昨年2月に県立大の設置・拡充を検討する方針を打ち出した。
県内には香川大(高松市など)や高松大(同市)、徳島文理大高松駅キャンパス(同市)、四国学院大(善通寺市)が立地する。県立大としては2004年に開学し、看護学科、臨床検査学科を擁する県立保健医療大(高松市)もある。県は若者の進学の選択肢を増やすため、新設や学部増による県立大の充実を目指した。
工学系学部が有力候補に
県は関連予算を組み、昨年7月に教育・経済関係者ら8人による検討委員会の初会合を県庁で開いた。大山智副知事は「是非も含めて新設、拡充を議論し、1年で方向性を決めてほしい」と委員に呼びかけた。
同10月の第2回会合では、県内高校生らを対象にしたアンケート結果などから「工学系学部は有力な候補」とした。地元企業から「技術系学生の採用が困難」との意見が出たことも踏まえた。今年6月の第3回会合でも、県が理系進学を志す高校生や企業への新たなアンケート結果を報告し、「県内企業の中核となり得る高度な技術人材を育成するニーズを確認し、工学系学部を候補とする」とした。
委員は昨秋、分野が重なりそうな香川大創造工学部を巡り、定員増などの構想があるか香川大に確認するよう求めたが、県からは今年に入っても説明がなかった。県政策課は県内の各大学に検討内容を伝えて意見を交わしているとした上で、委員からの「宿題」について「(香川大の)経営判断に関わることであり、聞いていない」とした。
検討委を傍聴した県議の一人は「工学系学部のニーズがどこまであるのか、わからない。『結論ありき』を感じる」と指摘する。
費用負担と今後の課題
県は県立保健医療大を開学する際、約5万平方メートルに主要8棟を整備。用地取得費を含む整備費は約106億7000万円に上り、財源の93%(約99億5000万円)を県債で賄った。開学から四半世紀も後の29年度に償還を終える予定だ。新たに県立大を設ける場合は、物価や人件費の高騰で費用がさらに膨らむ可能性が高い。
県が推す工学系学部についても、人材のニーズが数年先も多い保証はない。検討委の委員長を務める浅田和伸・長崎県立大学長は「今、特色があっても5年後はわからない。幅広く社会が変わっても対応できるよう柔軟な考えで議論に臨みたい」と語った。
検討委は今秋にも再び開かれる。香川県が想定する設置費用、効果を示し、学部や定員などの議論が行われる予定だ。県民の理解が得られる大学像を示せるか、知事選後に問われることになる。
他県の動き
若者流出が進む地方では公立大新設の動きが見られる。公立大学協会の「公立大学便覧」によると、3月現在で全国の公立大は101校。佐賀県は2029年4月の県立大開学を目指し、経営情報学部(仮称)の設置認可申請を準備している。設置費用として130億円以上を見込んでいる。
三重県は若者人口流出対策として県立大設置を検討したが、21年度に有識者会議が必要性は認めたものの、その後「費用対効果が高いと言い難い」との結論に達し、23年に「別の方策に注力する」として設置を断念した。



