縮む日本社会の生き方、欧州先進国に学ぶ 杉田菜穂教授が語る少子化の現実
縮む日本社会の生き方、欧州先進国に学ぶ 杉田菜穂教授が語る少子化の現実

少子高齢化が加速し、日本の総人口は減少の一途をたどっている。令和7年の人口動態統計(概数)によると、令和7年に国内で生まれた日本人の子供は67万1236人で、過去最少となった一方、死者数は158万9489人と2倍以上だった。縮む日本社会のその先に、何が待ち受けているのか。記者は未婚で今年33歳。人口政策に詳しい大阪公立大大学院経済学研究科の杉田菜穂教授(46)とともに考えた。

出生数過去最少、人口減は「当然の帰結」

令和7年の日本人の子供の出生数は過去最少となったことについて、杉田教授は「日本では1990年代以降、女性の社会進出に伴い、個人の選択や権利として子供を産む流れになってきた。女性も男性と同じように働き、気づけば30代半ば…という事例は想像にたやすい。結婚してから子供を産むことが一般的なので晩婚化は避けられない。そもそも、妊孕(にんよう)性(妊娠する力)は年齢を重ねると男女ともに下がるので、人口減は当然の帰結だ」と述べた。

平成7年をピークに生産年齢人口(15~64歳)の減少が始まったことについては、「その中で女性や外国人、シニア層などを積極的に雇用してまさに総力体制で人口減少社会に対応してきた。ところが、先送りにしてきた問題が間近に迫っている」と指摘する。

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2040年問題への備え、欧州先進国から学ぶ

団塊ジュニア世代が65歳以上となり高齢者人口がピークになる「2040年問題」では、深刻な労働力不足が懸念される。杉田教授は「現在はまさに劇的な変化の中にいるが、現実問題として、縮小した社会でやっていかなければならない。イギリスやフランスは、日本と同じ先進国でありながら人口は8000万人だ。労働力を移民に頼っている点は議論が必要だが、参考にできることは多い」と話す。

縮小社会では、これまで以上に個人が「どう生きるか」が重要になるという問いに対し、「そうですね。でも国の基盤に関わる教育、地域や国家の安全を守る分野での人手不足は本当に深刻な課題といえる」と応じた。

労働環境の整備と支援の重要性

「産めよ増やせよ」ではないかとの問いには、「労働人口は貴重な人的資源。だからこそ、労働環境の整備が今後さらに重要になる」と強調。結婚や出産を望む人への支援については、「もちろん、その人たちが希望を諦める社会であってはいけない。同じように少子化が深刻な韓国では、住宅補助など手厚い支援が進んでおり、成果が出ていると聞く」と述べた。

今年4月に始まった「子ども・子育て支援金制度」について、子供の有無が人間関係の分断を生む場面があるとの指摘に対しては、「『産む』『産まない』だけでなく、リスキリングなど自分が望む生き方ができる社会が理想だ。実現させるために、できる政策はまだあると思う」と語った。

個人の悩みを政策に反映する重要性

少子化や晩婚化、人口減少の背景にある個人の悩みや葛藤については、「少子化を巡る議論はまさに、一人の人間の人生の話だと思う。縮む社会を恐れる気持ちは分かるが、30年以上、日本社会は適応してきた。その自信を持ち、2040(令和22)年まで、また、それ以降を中長期的な視点で見るべき。社会は生ものなので今後も適応していける。一方で、データには表れない個人の苦悩や葛藤を、政策や企業経営に反映させることも重要でしょうね」と述べた。

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杉田教授は昭和55年3月生まれ、奈良県出身。幼少期から俳句に親しみ、研究者と同時に俳人としての顔も持つ。研究室がある大阪公立大杉本キャンパス(大阪市住吉区)は、都市の中にありながら緑豊かで、散歩しながら俳句を詠むことが息抜き。平成22年刊行の句集「夏帽子」に収められた「学問の自由泰山木(たいさんぼく)の花」は、研究室の窓から見える泰山木が花を咲かせる姿を詠んだ。俳句作りや研究のお供はお菓子。