高市早苗首相が今国会での皇室典範改正に意欲を示す中、焦点となっているのが「男系男子」へのこだわりだ。政府が掲げる改正案の骨子は二本柱で、一つは女性皇族が結婚後も皇族の身分を維持する案、もう一つは旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える案である。特に後者の推進に強く関与しているのが、自民党の麻生太郎副総裁である。コラムニストの矢部万紀子氏は、麻生氏の頑なな姿勢の背景に、祖父である元首相・吉田茂の存在があると分析する。
麻生氏にとって「死活的な課題」である理由
麻生氏は4月16日の派閥会合で「皇室典範改正は死活的な課題だ」と発言し、6月11日には「長い年月がかかったが、ようやくここまでたどり着いた」と述べている。しかし、なぜ男系男子にそこまでこだわるのか、その真意は明らかではない。矢部氏は、麻生氏が学習院初等科から大学まで一貫して学習院に通い、妹が三笠宮寬仁親王妃であるなど、皇室が身近な環境にあったことを指摘する。だが、同じ環境でも男系男子にこだわらない人もいる。矢部氏は、麻生氏が「現状」に疑問を感じることのない環境で育ったため、「現状維持→伝統→ブラボー」という思考に至ったと推測する。
著書から見える麻生氏の皇室観
矢部氏は麻生氏の著書『祖父・吉田茂の流儀』(2000年刊)を読み、皇室観を探ろうとした。しかし、同書は母・麻生和子さんの『父 吉田茂』(1993年刊)や吉田茂本人の『回想十年』(1957、58年刊)に多くを依拠しており、麻生氏自身の考えは見えにくい。皇室に関する章は「終生を『臣茂』として生きて」と題され、1952年に明仁親王(現上皇)の成年式と立太子礼の際、吉田茂が祝いの言葉で「臣茂」と述べ、民主主義に反すると議論になったエピソードを紹介している。
祖父・吉田茂のレガシーとの関係
矢部氏は、麻生氏にとって「男系男子」の維持は、祖父・吉田茂の遺産(レガシー)を否定することになると指摘する。吉田茂は戦後、象徴天皇制の枠組みを築いた一人であり、その伝統を守ることが麻生氏の使命だと自負している可能性がある。そのため、世論が愛子天皇を容認する中でも、譲歩できないのだという。
旧宮家の当事者の声
一方、旧宮家の関係者からは異なる意見も出ている。ある旧宮家の当事者は「女系が入っていてもいい」と述べ、柔軟な対応を求めている。しかし、麻生氏はこうした声にも耳を貸さず、男系男子にこだわり続けている。
愛子さまに引き継がれた帝王学
矢部氏は、愛子さまが「微動だにしない」姿勢で帝王学を引き継いでいることを評価する。その一方で、麻生氏の姿勢は「平安時代の藤原氏のようになる」と批判し、特定の政治家が皇室の在り方を左右することの危険性を指摘している。
今後の展望
政府の改正案骨子は6月22日に衆参両院の正副議長に了承され、今後の国会審議が本格化する。世論調査では女性天皇・女系天皇への支持が高いものの、麻生氏の影響力が強い高市政権下では、男系男子維持の方向が強まる可能性がある。矢部氏は、麻生氏の「頑なさ」が皇室の将来にどのような影響を与えるか、注視する必要があると結論づけている。



