「財政緊急対策・再建宣言」を出した久喜市の貴志信智市長は22日、初の市民説明会を開き、全事業をゼロベースで見直すことへの理解を求めた。会場で混乱はなかったものの、事業削減を警戒する参加者もいた。
市長「将来、危機に陥る前に手を打つ」
説明会で貴志市長は、参加者約90人に対し「財政はパンクさえしなければ健全なのか。自転車もパンクする前に傷んだタイヤを修理する。将来、危機に陥る前に手を打つ」と力説した。市の財政はすぐには破綻しないが、貯金にあたる「財政調整基金」が4年後に枯渇するとの試算を示し、宣言に踏み切った理由を説明した。
質疑では「消防団の削減は反対」「市職員の採用は中止すべきではない」など個別の取り組みに関心が集まった。終了後、参加した男性(77)は「現状で宣言を出すのは市の印象を悪くし、不利益が大きい」と批判した。
宣言を巡り前のめりの姿勢を懸念する声も
宣言を巡っては、貴志市長の前のめりの姿勢を懸念する声も出ている。2024年度の市決算では、財政の硬直度を示す「経常収支比率」は90.4%、豊かさを表す「財政力指数」は0.80だった。県内市町村の平均と比べ、いずれも数字の上では久喜市の方が良かった。
関係者によると、貴志市長は今回の宣言を出す前に議会側に「財政非常事態宣言」として提示したが、「そこまで危機的ではない」などと反対された。名称は変更したものの、宣言を出すことは譲らなかった。
背景には、前市長から引き継いだ複数の大型建設事業が将来、市の財政を逼迫しかねないとの危機感がある。約314億円をかけて整備中の新ごみ処理施設は、新たに20億円前後の費用が追加される。防災公園管理棟建設(約7億円)や、費用がまだ確定しない道の駅整備なども控える。説明会では見直し対象の全容は示されなかったが、総合運動公園改修(約39億円)が一例として挙げられた。
県内の他自治体でも財政再建の取り組み
県内の自治体では、他にも財政再建に取り組んでいる事例がある。飯能市は25年度から緊急財政対策を実施する。久喜市と同様に経済指標は健全の範囲内だったが、財政調整基金が枯渇する見通しとなり、改革に着手した。担当者は「財政指標は現状を表すものが多く、将来まで保証しないが、基金の確保は死活問題だ」と強調する。
26年度は262事業を休廃止または縮小し、13億円近くの予算を削減した。その結果、同基金などが推計で目標を上回る約21億円に達するとして、予定通り今年度末で対策を完了する見込みだ。
久喜市の宣言はまだ具体策が見えず、市民からは不安も漂う。抵抗する声もある中、貴志市長は事業見直しの内容を丁寧に説明しつつ、果断に実行できるかが問われている。



