国会で高市早苗首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が行われている。飲食料品の消費税減税や防災対策など、多くの問題が論じられていることは妥当だ。しかし、不十分な点がある。最も深刻な脅威である中国の最近の振る舞いについて、各党からほとんど表明がなかったことだ。これでは安全保障論議が深まるはずもない。
野党第1会派の対応に疑問
最も残念だったのは、衆参の野党第1会派の質問である。衆院では公明党の岡本三成代表が統一会派「中道」を代表して質問し、「多くの懸案がある。だからこそ(日中の)対話が重要だ」と述べた。参院では立憲民主党の田名部匡代幹事長が首相に対し、習近平中国国家主席との会談を求めた。
対話ができればそれに越したことはない。だが、中国の習政権は、安全保障上当然の対応を語った高市首相の台湾有事をめぐる発言に難癖をつけている。日本を「新型軍国主義」と決めつけ、日米分断を狙っている。経済的威圧もやめない。中国の異様な行動を、日本の政党なら厳しく批判すべきだ。ところが、そのような見解はどこも示さなかった。
田名部氏の発言と「正常化」の意味
田名部氏に至っては、中国の王毅外相が岩屋毅前外相と会談し「正常化を実現する必要がある」と述べたのをとらえ、「こうした対話の機会を関係改善につなげる必要がある」と語った。だが、「正常化」が首相発言の撤回や無効化を意味するのは明らかだ。王氏の発言後も中国外務省は高市首相を呼び捨てにする無礼を働いた。これらから目を背けて対話だけ論じるのは、中国のお先棒を担ぐようなものである。
核抑止と防衛力強化の議論不足
岡本氏は非核三原則の堅持を求めた。だが、それだけで中国、北朝鮮、ロシアの核の脅威から国民を守れるわけがない。米国の「核の傘」の信頼性を高めるなど核抑止態勢強化の議論をなぜしないのか。
日本維新の会の金村龍那総務会長は、小泉進次郎防衛相が非核三原則や原子力潜水艦についてタブーなく議論する姿勢を示す点を評価し、「米国の拡大抑止の信頼性と実効性を不断に高める必要がある」と述べた。これが国民を守る議論だろう。対中認識や防衛力強化策で自民党の質問も踏み込みが足りなかったのには失望した。