米国のトランプ大統領は10日、幼児のワクチン接種方針を大幅に見直す大統領令に署名した。麻疹(はしか)、おたふく風邪、風疹のMMR混合ワクチンを3種類のワクチンに分けて、別々の受診日に接種する方針を打ち出した。
トランプ氏は大統領令に署名する際、MMR混合ワクチンについて「同時に接種すると、かなり致命的な結果をもたらす恐れがある」と持論を述べた。トランプ氏らはワクチンと自閉症との関連を指摘するが、接種率低下を招き、感染拡大のリスクが高まる恐れがある。
推奨ワクチンを11疾病に絞る方針
大統領令では、幼児に一律で推奨するワクチンを17から11の疾病に絞る方針も示した。具体的には、麻疹、おたふく風邪、風疹、ポリオ、百日ぜき、破傷風、ジフテリア、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、肺炎球菌、ヒトパピローマウイルス(HPV)、水痘のワクチン。
一方、A型肝炎、B型肝炎、ロタウイルス、髄膜炎菌、インフルエンザ、新型コロナなど6種類のワクチンについては、原則、医師と保護者による個別判断に切り替えた。
司法判断を軽視した強行姿勢
トランプ政権は今年1月も、一律で推奨するワクチンを11種類に縮小する方針を示したが、連邦地裁が3月、この措置を差し止める判断を下していた。しかし、政権は司法の判断を軽視して、独自のワクチン政策を強行する姿勢だ。
接種義務を決める権限は州側にあり、大統領令だけで各州の接種義務が自動的に廃止されるわけではない。ただ、政権は州にこの方針を踏まえるよう求める模様だ。
ケネディ厚生長官の意向反映か
米政府で感染症対策を指揮するロバート・ケネディ・ジュニア厚生長官は反ワクチン団体の創設者で、就任以来、「ワクチン接種が自閉症に関連する」と繰り返し主張してきた。ワクチンの開発を規制してきたうえ、米疾病対策センター(CDC)のワクチン諮問委員会の全委員を解任し、ワクチン懐疑派を送り込むなどしてきた。今回の決議は非科学的なケネディ氏の意向が反映されたとみられる。
これに対し、米メディアは、米国小児科学会などが今回の見直しを批判していると報じている。
科学的裏付け乏しいとの報告
ワクチン接種と自閉症との関連についても、科学的な裏付けが乏しいとの報告がある。世界保健機関(WHO)のワクチン安全性専門委員会は2025年12月、10~25年の31件の主要研究などから、ワクチンと自閉症との因果関係を示す証拠はないと結論付けた。また、WHOは以前から、MMR混合ワクチンを3種類の単独ワクチンに分けることの医学的な利点を裏付ける証拠はないとしている。
麻疹流行の懸念
麻疹は米国で流行しており、CDCによると、8月6日時点で今年の感染者数は2465人に上る。麻疹は空気感染するため、ワクチン接種が感染予防に有効とされるが、接種率が低下すれば、流行が加速する懸念がある。



